死霊館のシスター (2018):映画短評
死霊館のシスター (2018)ライター3人の平均評価: 3
ハマー・ホラーも彷彿とさせる正統派ゴシック・ホラー
『死霊館 エンフィールド事件』で強烈な印象を残した悪魔の尼僧ヴァラクのルーツを描くスピンオフ。舞台は’50年代のルーマニア、古い修道院で起きた不可解な事件を調査するため、ベテラン神父と若い尼僧が派遣される。
修道院に隠された恐ろしい秘密といっても、蓋を開けてみれば昔からよくあるホラー映画定番の設定だし、ドッキリに頼りがちな恐怖演出も新鮮味に欠けるが、ハマー・ホラーを彷彿とさせるゴシックな世界観は、ホラー映画マニアの英国人コリン・ハーディならではで安心感がある。ルーマニアのロケ地の禍々しい雰囲気も悪くない。本家シリーズの霊媒師役ヴェラ・ファーミガの実妹タイッサをヒロインに起用した効果もアリ。
メリハリの効いた、ナンとも怖いショック・ホラー
『死霊館 エンフィールド事件』で、遭遇が”地獄に行くようなもの”と語られたシスター・ヴァラク。その邪悪な存在を反映し、ショック描写はかなり強烈。
ルーマニアロケで収められた古城の異様さが、まずイイ。乾かない鮮血、部屋の奥の闇に潜む何か、ヴァラクの形相。それらが荘厳かつダークな雰囲気を引き締め、ハラハラさせてくれる。
『死霊館』ユニバースの一本として見ると、単に逸話をつないだだけで物足りないが、主人公なのに足を引っ張ってばかりのベテラン神父に対して、T・ファーミガふんするシスター見習いの健気な奮闘ぶりが光り、このユニバースが強いヒロインありきであることを再認識した。
トランシルバニアの古い修道院で影が蠢く
監督のやりたいことが明確。この主題なら、普通は悪魔の尼僧がどのようにして誕生したのかを謎解き形式で描きそうなところ、そこは冒頭でサクサクと説明し終わり、あとは監督が描きたいものがじっくり描かれる。
それは、英国ハマー・フィルムの系譜を受け継ぐ、古典的欧州ホラーの美学。そして、それを具現化する舞台装置と小道具群。そのため舞台もロケ地もトランシルバニア。修道院は現地の14世紀の古城。基本モチーフが尼僧なので、十字架、墓石などキリスト教の古典的意匠が続々。昼でも薄暗い僧院内では、同じ修道服に頭巾の尼僧たちは、個体の区別がつかない。その特異な形象が宿す仄暗い影から、何かが浮かび上がってくる。