ブッシュウィック -武装都市- (2017):映画短評
ブッシュウィック -武装都市- (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
市街戦の臨場感が恐ろしくもスリリング!
地下鉄を出たら爆破が起こり、兵士がガンガン撃ってくる! そんな不条理な冒頭から首根っこをつかまれ、振り回される快作。
舞台はブルックリンに実在する町で、そこでのロケに加え、長い長いワンカット映像をつなぎ合わせた効果によって、とてつもない臨場感が生まれた。
やがて判明する”戦争”の正体は突飛な気もしないでもないが、オバマ政権期に製作されたことを思えば飲み込めないでもない。いずれにしても人種差別や銃社会、右傾化などのアメリカの病巣が見えるつくり。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以来、目の離せないD・バウティスタの『ブレードランナー2049』時にも似たストイックな演技も目を引く。
アメリカ社会の悪夢的な行く末を占う衝撃の市街戦映画
舞台はニューヨーク。いつものように自宅最寄りの地下鉄駅から地上へ上がったところ、見慣れた街が戦闘地帯と化していた。逃げ惑う大勢の人々、一般市民を攻撃する謎の軍隊、混乱に乗じて犯罪行為に走るストリートギャング。そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中、何も分からないまま戦場へ放り込まれた男女の決死のサバイバルを描く市街戦映画だ。
これはいわば、リバタリアン的な視点から現代アメリカ社会の分断と対立の悪夢的な行く末を占う作品。全編ノーカットかと錯覚させる疑似長回しによる、緊張感溢れるドキュメンタリータッチはさながら『バードマン』。低予算をカバーするための様々な工夫も、かえってリアリズムを高める。
分断が進むアメリカで本当に起こるかも?
“おしゃれ”エリアとなったブルックリンで戦争勃発! 最初から最後まで荒唐無稽だが、B級映画としての面白さはある。舞台となる街ブッシュウィックは治安が悪いと評判(犯罪率は低下中!)で、ギャングが戦争できるだけの武器を隠し持っていたり、正統派ユダヤ教徒もバット片手に戦ったり!? 人間、生き延びるためには戦わなくちゃな〜と心の片隅で決意しました。敵の正体と攻撃地を選んだ理由がわかって瞬間、ヒロインのストーナーな妹が吐く皮肉なセリフには笑ってしまった。タカ派監督J・ミリアス『若き勇者たち』時代からは想像できない敵の存在は、トランプ政権下で進行する分断と無関係ではないかも。