HOSTILE ホスティル (2017):映画短評
HOSTILE ホスティル (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
アイデアと演出力が光るセンチメンタル・ディストピア
ディストピア世界での一夜のサバイバルという、映画の大筋は極めてシンプル。砂漠で脚を骨折した女性が、夜行性のクリーチャーと繰り広げるバトルはスリリングで目を奪う。
そんな骨格にソウルを宿らせるのが、回想シーンとして語られるヒロインのロマンス。麻薬まみれの暮らしを断ち切り、恋人との絶望的な出来事を乗り越えてきた彼女は、文明が存在していた頃もサバイバーだった。そんな現在と過去のリンクが結末に向かって密に結びつき、切ない余韻を残す。
低予算を逆手にとったアイデアの勝利。説明を極力省き、演出力で見せ切ったM・テュリ監督の手腕も光る。この新鋭の名は、ぜひ覚えておきたい。
世界中の映画祭を席巻した愛と宿命の終末サバイバル・ホラー
フレンチ・ホラーの鬼才ザヴィエ・ジャンが製作総指揮を務めた新人監督の長編処女作。なるほど、これは目の付けどころが面白い。基本路線はロメロ的な終末サバイバル・ホラー。パンデミックにより文明が崩壊した世界を舞台に、砂漠のど真ん中で立ち往生したヒロインを奇怪なクリーチャーが襲う。そこに平和な頃のフラッシュバックが挿入されることで、男女の宿命的な愛を描いた王道的ラブストーリーへと昇華されるのだ。上映時間が90分以内と非常にコンパクトで、『ミステリー・ゾーン』の1エピソード的なノリで気軽に楽しめるところもいい。世界中のジャンル系映画祭で賞を取りまくっているのも納得。
ゾンビ映画でサバイバル映画でロマンス映画
新人監督による低予算映画はいつも、新鮮なアイデと、監督独自のテイストが見どころ。本作はその2つが明快。基本はゾンビもの、主人公は戦うヒロイン、という王道を踏まえつつ、ヒロインの現在進行形のサバイバル生活と、彼女のゾンビ出現以前の世界での生活を、並行して描くところがポイント。現在の世界には、アポカリプス的光景と肉弾アクションをプラス。この世界がどういう状況なのかを、字幕や説明セリフではなく、シーンで描く。一方、かつての生活にはロマンス要素をたっぷり投入。この"現在のヒロイン"と"かつてのヒロイン"がきっちり繋がっていく。そしてラストに、そうだったのかと感動を呼ぶラストが待っている。