アルキメデスの大戦 (2019):映画短評
アルキメデスの大戦 (2019)ライター3人の平均評価: 4
菅田×柄本(兄)の“スーパーコンボ”
学ラン姿に、髪型七三分けの菅田将暉を観るだけで、『帝一の國』のギラギラ感が甦るが、こちらの主人公も違う意味で、変人キャラ。そういう意味では、同じく彼の芝居で魅せ切る作品ともいえるが、戦艦大和の建設にストップをかけるべく、バディを組む補佐官を演じるのが“18年の日本映画界の顔”である柄本佑だけに、ある意味“スーパーコンボ”状態である。いつものスケール感には欠けるものの、会議映画としての醍醐味など、山崎貴監督のマニアックさが、いい方向に出ており、近年の監督作では妙に目立っていた、あざとい泣かせ演出もない。しっかり、“日本版『イミテーション・ゲーム』”に仕上がっている。
悪魔の取引を迫られる菅田将暉
戦争の足音が近づいてきた中で、日本海軍の内部の巨大戦艦を重視する保守派と航空戦力の拡充を求める派閥の争いに“数学”というアクセントを加えたロジカルなエンターテイメント。数学の天才・櫂直(かいただし)を演じる菅田将暉の変人プリが見ていてい楽しい。クライマックスの軍事会議でのは舘ひろし、國村隼、小林克也、橋爪功、田中泯と言ったベテランと菅田将暉が繰り広げる舌戦シーンは見ごたえがあります。山崎監督は宇宙戦艦でない方のヤマトも映画にしましたね。菅田将暉の変人キャラの面白さで★一つプラス。舘ひろしの少し若々しい山本五十六のキャラクターも意外で新鮮でした。
描写も人物像もオタク精神を貫き、描くべきことを描ききっている
戦艦の巨大さを強調し、戦闘機の縦横無尽な動きを駆使するアクション場面に、山崎監督のメカマニアなこだわりと気合いが満ちあふれ、ひたすら圧倒される。このマニアックさは、菅田将暉が無双の主人公の数字オタク的側面、さらに物語の軸をなす戦艦のデザインにも広がり、やがてそのオタク精神が人間の抑えられない危険な本能も導いていく。こうした流れを、余計なエピソードを入れ込まず、太い本流のみで正々堂々と描ききったところが好印象。ここ数作、たまに(大人の事情もあるだろうが)ドラマが破綻していた監督の悪い癖も出ていない。しかも時代を超えて、現在への痛烈な警鐘にもなっている。戦争映画としての目的も見事にクリアした。