ルイスと不思議の時計 (2018):映画短評
ルイスと不思議の時計 (2018)ライター3人の平均評価: 3
ホラーではないが、青二才ストーリーから軸はブレず
スピルバーグ率いるアンプリンが残虐ホラーの異才E・ロスにファンタジーを撮らせるのは意外かもだが、『ホステル』も『グリーン・インフェルノ』も悲劇に突進していく青二才の”ドラマ”を基盤にしていたことを思えば腑に落ちる。もちろん向かう先は悲劇にあらず。
ここでの青二才とは孤児の少年と、魔法がヘタな叔父という魔法使いたち。難局に直面した彼らのそれぞれの責任感がドラマを動かす。
青二才たちが一歩踏み出し、成長する物語は児童文学の原作らしく子どもに寄りがちではあるが、J・ブラックら芸達者な俳優陣の妙演が生きて一気に見せる娯楽作に。監督のアンプリン愛も垣間見え、ほっこりしてしまった。
イーライ・ロス監督のいい意味での子供っぽさが爆発
R指定ホラー「ホステル」「グリーン・インフェルノ」のイーライ・ロス監督の意識は"子供も楽しめるホラー映画"なのかも。この監督のいい意味での子供っぽさが爆発、それを堪能するのが本作のおいしいいただき方。ハロウィンのカボチャが動き出してベトベトしたものを吐き出したり、樹木を刈り込んで作られたライオンがしつけの悪い犬のような行動をしたり、小さな子供たちが大好きそうなシーンが満載で、それを監督自身が楽しんでやっているのが伝わってくる。壊れた古い人形たちの集団が動きだすシーンも、定番設定なのにイーライ・ロス色たっぷり。監督が意外なところで嬉しそうにカメオ出演しているので、そこもお見逃しなく。
イーライ・ロス監督は、ティム・バートン化するのか?
『ハリポタ』に影響を与えた原作だけに、孤児になった主人公が魔法と触れる設定などカブる部分も少なくないが、ここは「スーパーナチュラル」の脚本家と組んだイーライ・ロス監督作ということに注目。妻やカイル・マクラクラン、コリーン・キャンプなど、趣味丸出しのキャストが怪演するなか、しっかりホラーな音響効果に、お子様はトラウマ必至な描写など、ダークファンタジーの見せ場をしっかり用意。105分の尺も嬉しく、今後ロスがティム・バートン化していく予感も感じさせる仕上がりだ。ただ、屋敷内中心の展開からか、どこかスケール感に欠け、欲しがりなポッタリアンにはモノ足りないかもしれない。