セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! (2017):映画短評
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! (2017)ライター2人の平均評価: 4
国家間のイデオロギーを超えた友情を暖かなユーモアで描く
舞台は’90年代初頭。社会主義圏の崩壊による経済危機で貧困のどん底に追い詰められたキューバ人の大学教授セルジオと、宇宙滞在中にソ連がなくなったせいで地球へ戻れなくなったロシア人の宇宙飛行士セルゲイ。激動する世界情勢に翻弄された2人の男性が、アマチュア無線通信を介して友情を温めていく。実在の宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフを題材にしているものの、ストーリー自体は完全なフィクションだ。やがて、セルジオの無線仲間であるアメリカ人ピーターも加わり、壮大な「セルゲイ救出作戦」が決行される。国家間のイデオロギーを超えた友情や人道主義の重要性を、ユーモアとノスタルジーたっぷりに描いた佳作だ。
時代の変化にとまどう者たちの愛すべき物語
ソ連の崩壊により、地球に帰還できなくなったロシアの宇宙飛行士の実話に目を付けた点が、まずイイ。迎え入れてくれるはずの国を失った者のペーソスがユーモアとともに、ジワッとあふれ出る。
一方、彼と無線で交流する主人公はキューバ人で、こちらも社会主義圏の崩壊により、先の見えない生活を余儀なくされている。一観客として深く共感できるのはこちらの方。時代の変化に対するとまどいが、よく表われている。
共産主義思想に関する描写を抑制したことで庶民の普遍的な悲喜劇の側面が強く出た。アクが強くないのでその点は物足りないが、人間ドラマはなかなかいい味を出している。愛らしい子役の配置も巧い。