ジュリアン (2017):映画短評
ジュリアン (2017)ライター2人の平均評価: 4
社会派だが、タッチはとてつもなくコワいホラー!
DVという今どきの問題を扱いながらも、それへのアンチ姿勢を声高に訴えたりせず、淡々とその状況だけを見せる。結果、本作はとてつもなく怖い映画となった。
子どもの表情だけで、恐怖は十分に伝わってくる。パパの暴力からママを守りたい、でも自分もパパに殴られるかもしれない、そんな恐ろしさを、主人公ジュリアンの顔つきや行動から伝える、ソリッドな映像表現は見事というほかない。
直接的な暴力描写はほとんどないが、ガタイのよい父親の威圧感や狂気も手伝い、いつ爆発してもおかしくないパンパンに張りつめた空気がみなぎっている。これはひょっとしたら、今年いちばん恐ろしいホラー映画かもしれない。
ストーカーを早めに治療できる環境が整うことを祈ります!
DV男と離婚しても、子供の親権を共有していると絶縁は難しいと思わせるのが冒頭の場面だ。主人公ジュリアン君は恐怖に震えながら迎えにきた父親の車に乗り、祖父母宅へ。親と同居の上、仕事もうまくいってないらしいと徐々に父親の異常性が明らかになり、見る側の興味をジュリアンと母親のサバイバルへと誘導する演出だ。エスカレートする父親のストーカー行為の恐ろしいこと! 線引きが難しい犯罪とはいえ、激昂して過剰な暴力行為に走らないと規制できないのが辛いというか、綱渡りというか……。治療が可能な病気らしいので、被害者が命の危険を訴える前に取りしまれる状況になればいいなと思った次第。