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タロウのバカ (2019):映画短評

タロウのバカ (2019)

2019年9月6日公開 119分

タロウのバカ
(C) 2019 映画「タロウのバカ」製作委員会

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

くれい響

胸に染みる菅田将暉のモノローグ

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ゲルマニウムの夜』の大森立嗣監督が帰ってきた! もともとデビュー作として用意していた脚本だけに、かなり荒削りではあるが、観客がその余白を埋める作品でもあり、常にヒリヒリした空気感と少年たちの痛みは、『KIDS』『ガンモ』、そして『メイド・イン・ホンコン』に近いものがある。とはいえ、このヘヴィなテーマで119分の尺を引っ張ることができたのは、大森監督とは『セトウツミ』で組んでいた菅田将暉の力によるところが大きいだろう。今、この企画に乗った心意気が素晴らしいうえ、『ディストラクション・ベイビーズ』以上に危うい芝居を魅せる。そして、なにより印象的な語り口のモノローグが胸に染みる。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

こんな世界からも“神話”は立ち上がる

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

リミッターを外す、どころかフルパワーでぶち壊した大森立嗣の渾身作。デビュー前の脚本が基ながら「いま撮る必然」に満ちた点では大林宣彦『花筐』と並び、当代きっての人気者達が参戦した意義では『ディストラクション・ベイビーズ』等を引き継ぐ闘争となる。

現在日本社会の腐敗に敏感な作家は「バカ」という主題を同時浮上させている。『イワンのバカ』的聖性を纏わせつつ、インサイドでの改革の試みが石井裕也『町田くんの世界』で、アウトサイドからの一揆が片山慎三『岬の兄妹』なら、ワイルドサイドへ飛び出せと促すのが『タロウのバカ』だ。そこには棄てられた子供達が聖域を作り、野生美を湛えたタロウ=YOSHIが待っている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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