マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ! (2018):映画短評
マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ! (2018)ライター4人の平均評価: 4
単なる“スウィンギング・ロンドン入門書”に非ず
映画の1シーンのような芸名誕生秘話から、アメリカ侵略に至るサクセスを語る“マイケル・ケインプレゼンツ”な時点で、かなりのアドバンテージ。入門書的要素が強いが、台頭するロックバンド紹介のほか、『パイレーツ・ロック』の元ネタなどの音楽シーン、ヴィダルサスーンとメアリー・クヮントによって生まれたアイコン、ツィギーに代表されるファッションシーンなどが束になり、保守的な社会に立ち向かい、一時代を築いたことも丸わかり。“ドラッグがすべてを終焉させた”というまとめは、強引に思えるが、85分を一気に観せる演出はなかなか。『アクロス・ザ・ユニバース』の脚本家がクレジットされているのも頷ける。
鮮やかに甦るスウィンギン・ロンドンの時代
スウィンギン・ロンドン好きにはたまらないドキュメンタリー。タイトルの由来はもちろんザ・フーだ。ハリー・パーマーことマイケル・ケインがホストを務め、デヴィッド・ベイリーやメアリー・クワント、ポール・マッカートニー、マリアンヌ・フェイスフル、ツィギーなど、’60年代ブリット・カルチャーを牽引したキーパーソンたちの証言を基に、なぜあの時代にイギリスで最先端文化が花開いたのか、そこにはどういう意味があったのかなど検証していく。惜しむらくは、大好きなルルやサンディ・ショーが一瞬のコメントだけだったこと、ちょい上の世代だけどペチュラ・クラークにも取材して欲しかったこと、上映時間85分は短いということか。
ノスタルジックなドキュメント? いや、これは”粋”だ!
1960年代スウィンギン・ロンドンのドキュメンタリーは、リアルタイムで撮られた『TONITE! LET'S ALL MAKE LOVE IN LONDON』が有名だが、本作は21世紀にその時代を振り返った秀作。
大人への反抗から生まれた、このユース・カルチャーがどのようにして盛り上がったのかを検証。当時の音楽や映画、ファッションの魅力もしっかり伝わるのが嬉しい。
先述の『TONITE!~』では若々しかった名優M・ケインが、ここでは語り手として進行役を務める。ノスタルジーに陥り過ぎず、軽妙に語って聞かせるその姿は、60年代の“粋”を体現したかのようで、これまた魅力的だ。
年明けは60年代ロンドンにタイムスリップ旅行
英国贔屓なら必見。60年代のスウィンギング・ロンドンを当時の"英国の粋"を象徴する2大キャラ、「国際諜報員」のクールな諜報員ハリー・パーマー、「アルフィー」の遊び人アルフィーを演じた英国名優マイケル・ケインが紹介するというオイシすぎる趣向。そのうえ"目で見る60年代ロンドン"を徹底。マリアンヌ・フェイスフルやツイッギーが当時を語る"音声"は現在のものだが、画面の"映像"は(マイケル・ケイン以外は)当時のもののみ。若者だけでなく、通りを歩く中年男女の発言や子供たちの遊びも写し出され、社会の変化も伝わってくる。映画を見ている間はずっと、60年代ロンドンにタイムスリップしている気分が味わえる。