僕たちのラストステージ (2018):映画短評
僕たちのラストステージ (2018)ライター4人の平均評価: 4
笑って泣ける…とは、こういうことだ
ローレル&ハーディの晩年にスポットを当てた点が、まずイイ。人気下降でドサ回り、忘れられた人扱いされて、ちょっと寂しくなっても、ステージに立てばお客をしっかり笑わせる、そんなふたりの物語。
コンビが残した芸の再現性は高く、そのビジュアルには、こちらが思わず笑ってしまうほど。悲し過ぎず、バカバカし過ぎない、ユーモアとペーソスの絶妙の配合。
舞台となる英国の庶民性を的確に切り取ったのは、『フーリガン』のベアード監督ならではのイイ仕事。クライマックスのラストステージへの盛り上げも巧妙で、感極まった。特殊メイクでローレル&ハーディになりきったクーガン&ライリーの妙演も素晴らしい。
2人が無意識に感じている居心地の良さが伝わってくる
主人公コンビは1930年代アメリカの人気お笑いコンビ、ローレル&ハーディだが、彼らの絶頂期ではなく、すでに過去の人になり国外を巡業するようになった頃を描いているのがポイント。だから、有名人の伝記映画ではなく、長年に渡ってずっと一緒にやってきたもう若くない人間たちを描く物語として見えてくる。
その関係の描写がさりげないのがいい。2人はお互いを長く見てきたので、喧嘩もするが、わずかな言葉で和解もできる。2人が互いの近くにいることで、無意識のうちに居心地の良さや安心感を感じていることが、セリフではなく、ちょっとした仕草と表情で伝わってくる。その気配が心地よい。
いつの時代も変わらぬ“コンビ芸人あるある”
『フィルス』やプロデュース作『フーリガン』のように、ドラッグやヴァイオレンスとは無縁、品行方正なジョン・S・ベアード監督作。同い年(1965年生)であるスティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリーの老けメイクが哀愁を漂わせながら、いつの時代も変わらぬ“コンビ芸人あるある”が展開する。そして、ローレル&ハーディが女優と脚本家を妻にしたように、お互いが自分に欠落したモノを相方に求めた宿命に、病院コントからの伏線が泣かせる。クイーン現象のように、“極楽コンビ”が再注目されるとは思わないが、かなりの破壊力を持つ一本。邦題はさておき、こういう地味な秀作がしっかり劇場公開されるのは有難い!
極楽コンビの晩年を優しい視点で見つめる
お笑いコンビとして世界中で人気を集めたローレル&ハーディ。物語は、コンビを解消して以来、忘れられた存在になっていた彼らが、再びペアでツアーをする晩年に焦点を当てる。行く先々で、栄光が過去のものだと知らされるふたり。しかし、彼らお得意の悪意のない笑いは、まだまだ人を引き付ける。そして、あの時代らしく、もともとプロデューサーによってコンビを組まされたふたりは、このツアーで、友情を試されることにもなるのだ。ローレル&ハーディのどたばた喜劇を、ジョン・C・ライリーとスティーブ・クーガンが見事に再現。彼らの演技からも、映画全体からも、優しい気持ちがたっぷり伝わってくる。