ラ・ヨローナ ~泣く女~ (2018):映画短評
ラ・ヨローナ ~泣く女~ (2018)ライター4人の平均評価: 3.3
名バイプレイヤーが、ちゃら~んと大活躍
なまはげ的な意味合いもある、怪談“メキシコの貞子”に目をつけたジェームズ・ワンが、それを使って『呪怨』『仄暗い水の底から』あたりのJホラーをアレンジしたとしか思えない『死霊館』ユニバース最新作。あまりに王道すぎる展開&恐怖演出に驚かされるなか、『アナベル』の神父が紹介する強面な助っ人を演じる「ブレイキング・バッド」の名バイプレイヤー、レイモンド・クルスが“ちゃら~ん”と見せ場たっぷり! さらに、日本公開作が今年4本目となるリンダ・カーデリーニが虐待容疑を懸けられた母親の執念を魅せてくれる。しかも、彼女がメガネっ子役だった『スクービー・ドゥー』のオマージュにニンマリ。
このシリーズは期待を裏切らない
ジェームズ・ワン製作の「死霊館」シリーズは、ホラー映画の定石を守りつつ、その枠組みの中にさまざまな独創性を盛り込んでくれるのが魅力。同じ世界が舞台の本作もその魅力は変わらない。モチーフは南米系の都市伝説だが、その根底にあるのはホラーの古典的テーマである"母親"というものの持つ恐ろしさ。ドラマの中に複数の母親が登場して、そのテーマを浮き彫りになる。
本当のことを話さない子供、家族が救いを求める宗教的リーダーなど定番アイテムを盛り込みつつ、日常生活のよくある場面がするりと異様な光景に変貌するという恐怖演出をたっぷり展開。その中で、"泣く女"をどう出現させるかに監督の手腕が光る。
ショック度高めでグイグイ押してくる!
『死霊館』ユニバースは、『アナベル』シリーズも『死霊館のシスター』も一発目はショック度指数高めで攻めてくる。本作も例外ではなく、どっきりを存分に楽しめる。
絵的に計算されている点がいい。光と影、白と黒、水と空気、それらのコントラストで恐怖を喚起する妙。水に近寄ると襲われるという設定も絶妙で、川や池はもちろん、お風呂にプール、さらには雨粒が写っただけでハラハラ。幼児虐待疑惑のエピソード挿入もサスペンスをあおり、巧い。
新鋭M・チャベスは『死霊館』シリーズの第3作の監督にも抜擢されたというが、ビジュアルセンスはかなりのもの。ユニバースの今後の広がりにも期待できそうだ。
メキシコの伝説的な女幽霊、初のハリウッド降臨
亡くした我が子の代わりに子供をさらう「泣く女」ことラ・ヨローナ。このメキシコの有名な女幽霊は、かの国では古くから何度も映画の題材となってきたが、今回はジェームズ・ワンが製作した初のハリウッド版だ。’70年代のロサンゼルス。貧しいメキシコ系母子家庭の子供がラ・ヨローナの犠牲となり、母親のSOSを無視した担当ソーシャルワーカーの子供たちが狙われる。現代にも通じる移民やシングルマザーの諸問題を投影した脚本は興味深いが、仕上がりとしては平均的な怪談映画といったところか。やはり、アメリカを舞台にしたことで、幽霊伝説の土着的な魅力が失われたことの影響は大きい。個人的には’61年のメキシコ版がおススメ。