パパは奮闘中! (2018):映画短評
パパは奮闘中! (2018)ライター2人の平均評価: 4
男性学と、21世紀の資本
タイトルを裏返すと「ママは失踪中…」だが、夫オリヴィエの母と妹は家族を放って姿を消した彼女に深い理解を示す。それはまともに話ができない強圧的な男だった父の気質を、オリヴィエが受け継いでいることに起因するようだ。父性の評価の見直しと再定義。それに加えて経済状況の厳しさがダブルテーマとしてのし掛かる。
主人公一家は低所得の核家族であり、職場では常に雇用と貧困の問題が渦巻いている。『クレイマー、クレイマー』(79年)の中産階級イズムはもちろん、ロマン・デュリス主演のモラトリアムな青春三部作(02年~13年)からも時代は遠のいた。日本でも当事者感覚でヘヴィな「あるある」系。ラストは絶妙で泣けた。
男の生き方と夫婦の在り方を問うお父さん奮闘記
主人公は通販会社倉庫で現場リーダーを務める2児の父親オリヴィエ。たとえ低賃金でも子供を育てるため、ブラックな労働環境から同僚を守るため、仕事に労組活動にと没頭する責任感の強い彼だが、しかしそれゆえ家事や子供の面倒は共働きの妻ローラに任せっきり。彼女がストレスのため職場で倒れたことすら知らない。そして、何も言わず黙って我慢していた妻(そりゃそうだ、正義の人に不満を言ったところで自分が悪人になるだけだもの)がある日突然姿を消し、残されたオリヴィエは途方に暮れることとなる。グローバルな格差社会の現実を映し出しつつ、男性の生き方や夫婦の在り方を問う作品。身につまされるお父さんも多いかもしれない。