WE ARE LITTLE ZOMBIES ウィーアーリトルゾンビーズ (2019):映画短評
WE ARE LITTLE ZOMBIES ウィーアーリトルゾンビーズ (2019)ライター3人の平均評価: 4.3
カオスな快感
ゲーム的画像やイメージカットなど、次から次へとザッピングのように押し寄せる作りは、一歩間違えれば単なる垂れ流しの印象を与えるが、今作の場合、いちいち映像が刺激的&蠱惑的。うっかり魅入ってしまうというマジックがはたらく。
親を亡くした子供たちの悲壮感は置き去りにされ、徹底して前向きに、無邪気に、パンクに突っ走る流れが、独自のムードを形成。子供たちを突き放したような演出も、彼らの演技の未熟さをカバーするうえで効果的。
つまり、あらゆる要素を「やっつけ」「勢い」で作ったように見せかけ、じつは緻密な計算をはたらかせ、観たことのない映画に細心の注意でアプローチした例。心や脳よりも、感性に訴え続ける。
現代社会の閉塞感をぶっ飛ばす大人向けのパンクなキッズムービー
少年少女が並んだビデオゲーム風のポップなチラシ・デザインを見て、なんだ、子供向けの夏休み映画の類いかと思ったら大間違い。両親を亡くした4人の斜に構えた子供たちの、夢とも現実ともつかないシュールなアドベンチャーを通して、閉塞感に包まれ殺伐とした現代社会のあれこれをシニカルなユーモアで蹴散らしていく。言うなれば、いい意味で成熟していない大人向けのパンクなキッズ・ムービーだ。あえて可愛らしさを微塵も感じさせない子役たちがまたクール。劇中で使用される挿入曲も素晴らしくキャッチーで、鑑賞後も’80年代イタロディスコ風のエンディングテーマ「ZOMBIES BUT ALIVE」が頭の中をグルグルとする。
2019年上半期ベストワンきました!
27分の短編『そうして私たちはプールに金魚を、』と同じ熱量で展開される1800カット・180シーン・120分。確かに、広告マンが撮った観る人を選ぶ映画かもしれない。ただ、監督こだわりのヴィジュアル&音楽センスの洪水、さらに豪華キャストの闇鍋状態は、序盤こそ鼻につくものの、次第に快感へと変わっていく。ウェット&ドライを使い分けた演出が突き刺さり、ゾンビのように感情を失った少年たちのRPG的な生き様がエモいからだ。まさに2019年の『ノーライフキング』×『スワロウテイル』だが、同時に時代を切り取ったジャパニーズ・アート作品として楽しめることもあり、サンダンスなど、海外での評価が高いのも頷ける。