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男はつらいよ お帰り 寅さん (2019):映画短評

男はつらいよ お帰り 寅さん (2019)

2019年12月27日公開 115分

男はつらいよ お帰り 寅さん
(C) 2019 松竹株式会社

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

中山 治美

大人になって染みる寅さんの存在

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

記念映画の華やかさは表面だけで、中身は相当シビアだ。満男はやもおとなり、再会した泉の家庭事情は深刻さを増している。つい寅さんの恋愛劇に目を奪われがちだが、歴代マドンナはリリー(朝丘ルリ子)のように男や仕事に翻弄されながら生きていたり、歌子(吉永小百合)のように父一人を残しての結婚に迷っていたりと、人生の岐路に立たされた人たち。そこにふっと寅さんが現れ、彼女たちの背中を押し、脱力の笑いを届ける。時代を生きる女性たちへの応援歌だったとは今更ながら気付かされた。そりゃ皆、美女たちが寅さんを慕うワケだ。そして挿入されるシリーズの名シーンに確実に笑わされ、改めて秀逸な脚本に脱帽するのであった。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

果たして、今の日本を寅さんが見たらなんと言うだろうか

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 中年にさしかかって人生の壁にぶち当たった満男が、もし今ここに寅さんがいてくれたらと過去の出来事を振り返り、24年ぶりに再会した泉と旧交を温めることで人生を見つめ直す。さくら夫婦やリリーさんなど今も健在なのは嬉しいし、フラッシュバックで使用される旧作映像の数々も懐かしいが、それだけになお一層のこと、あの人もこの人もいなくなってしまった、なによりも寅さんがいなくなったことの大きな喪失感が胸に迫る。自由気ままで身勝手な風来坊、しかし義理人情に厚くて人間臭い。そんな破天荒キャラが大衆に愛されたあの時代に想いを馳せつつ、閉塞感に包まれた今の日本を寅さんが見たらなんと言うだろうかと考えずにはいられない。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

トラを待ちながら

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「過去作のシーンを並び替えて、新作を作る」とは、いかにも横尾忠則な発想だが、それを実現してしまう山田洋次監督もスゴい。しかも、映画として成立させながら、「くるまや」はカフェとなり、満男は男やもめの作家になり、違う役でちょいちょい出てた笹野高史はいつの間に御前様になっている。とにかく、今を描きながら、“あの人”の帰りを待つ展開は、かなり切ない。そんななか、『家族はつらいよ』では許せないノリが許せるという卑怯さを感じながら、寅さん節での運動会やメロンの鉄板エピソードに、喜劇人・渥美清が唯一無二の存在であることを痛感させられる。にしても、リリーがリリーのままであることに驚愕!

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

“今”を活きている映画

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

もっと、ノスタルジックな作品なのかと思っていました。それが作品を見てみたら、とっても“今”を感じる映画になっていて、いい意味で裏切られました。
とても心地よく、驚きに満ちた映画です。
山田洋次監督のコメディ作家としてのテンポ感の絶妙さを再確認できました。
吉岡秀隆を軸にして後藤久美子、倍賞千恵子、前田吟などがいないはずの“寅さんの存在”を形作っていきます。
50年間・50作品の歴史の積み重ねがあってこそできる映画であり、こんな映画は今後出てこないでしょう。
懐かしさよりも、新しさを感じられます。
と言いつつ、過去作に登場するマドンナの若かりし姿も嬉しくなります。

この短評にはネタバレを含んでいます
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