さくら (2020):映画短評
さくら (2020)ライター3人の平均評価: 3.3
さながら日本版『ホテル・ニューハンプシャー』
いやあ、ほんわかとした印象のポスターデザインにすっかり騙されました。どこにでもいる平凡な家族の悲喜交々を描いた感動的なファミリー映画…かと思いきや、一見したところ平凡そうな家族の一筋縄ではいかない深い闇が浮き彫りとなる。お兄ちゃんが好き過ぎて次第に行動が常軌を逸していく妹も怖ろしいが、そんな妹の過剰な愛が原因で悲惨な目に遭っていく長男の哀れな末路にもちょっと愕然。それでいて、日常を淡々と綴っていくファミリー・ドラマ的な演出が保たれるため、なんとも言えない不穏な空気が終始漂う。さながら日本版『ホテル・ニューハンプシャー』。やはり好き嫌いは大きく分かれるだろう。
一筋縄ではいかない家族とわんこの話
「なぜ、矢崎仁司監督が、顔面偏差値高めキャスト&わんこの松竹映画を!?」という疑問が生じるなか、見事な蹴りも魅せる小林由依が登場するあたりで、妙な説得力を持ち始める。生も性もジェンダーも、毒たっぷりに描かれるが、展開どころかペースも掴めず、東京事変の主題歌が流れるエンドロールまで、得体の知れない感に引きつけられる。西加奈子原作ならではクセの強さが評価の分かれどころだが、ジョン・アーヴィング好きなら受け入れやすい独特な世界観。『渇き。』の衝撃から6年、『アメリカン・ビューティー』オマージュなイメージカットも見事にハマる小松菜奈の圧倒的な小悪魔キャラに、★おまけ。
ボールの行方
ちょっと不思議な家族の映画
結構えぐいというか、生々しい部分がさらりと描かれているので、時にドキッとさせられます。
矢崎監督は(特に若手)キャストには自由にやらせている感があり、それが時々、映画と物語の枠を超えてくるように感じることもありますが、それもまた”味”になっています。
原作モノを多く手掛けている監督らしい手堅さと、物語の枠からはみ出そうなキャストのせめぎ合いが見どころです。