隣の影 (2017):映画短評
隣の影 (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
ジワるブラックユーモアとほろ苦ドラマ
1本の木をめぐる、疑心暗鬼が引き起こす隣人トラブルだけじゃなく、同時に集合住宅や夫婦間の問題など、要は人間関係の難しさや面倒臭さを、サラリと89分で描いたアイスランド映画。『たちあがる女』同様、主軸はサスペンスであるにも関わらず、絶妙なブラックユーモアとほろ苦な人間ドラマが徐々にジワる。クライマックスはいきなりスプラッタ・ホラーと化すものの、終始カメラワークや音響効果が控えめだけに、不穏な空気が漂いまくり、ミヒャエル・ハネケ好きはツボること間違いなし! もうひとつの主役である北欧住宅特有のデザインも楽しめるほか、いい顔してる、わんこ&にゃんこ映画でもあったりする。
ご近所付き合いが怖くなり、庭のない家に住みたくなる!
隣家の大木が我が家の庭に影を作っている! 傍目には些細に思える事態に端を発する隣人同士の敵対関係がどんどんエスカレートし、驚きの連続。特に頑固な老婦人の常軌を逸した行動が怖すぎる。頑なに庭の木に固執するので、「もしや死体でも埋めたか?」と邪推したし、妄想を掻き立てる展開もこの作品の魅力だ。平凡な人の普通の生活も一歩間違えれば狂気的な事件へと発展する、まさに今の時代を反映させた脚本の巧みさ。不穏な空気感を盛り上げる映像もよし! 見ながら、ご近所付き合いに至らない点はないか自問自答。庭付きの家にはもう憧れないな。
ちっちゃなトラブル、大きな悲劇
ざっくり言うと”隣人トラブル”物語。ホラー映画のテイストとは無縁だが、それでも恐ろしく、ハラハラしながら見守った。
“隣の家の木が邪魔で日光浴できない”と言われたら、”椅子の位置をズラせばいいだけなのでは”と思われるかもだが、日照時間が短いアイスランドでは深刻な問題になりうるらしい。そんな発端から、疑心暗鬼、結果的に血で血を洗う物語に発展。ブラックユーモアをにじませた結末まで目が離せない。
本作には3組の夫婦が登場し、それぞれの子どもとの関わりも描かれている。不寛容は子どもの運命をどう変えるのか? 本作の手前勝手な大人たちを俯瞰すると、深く刺さってくると同時に、やはり怖くなる。