太陽は動かない (2020):映画短評
太陽は動かない (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
『サイレント・トーキョー』にも似た歯がゆさ
製作サイドの「続きは、Huluで」ならぬ、「前日譚は、WOWOWで」な狙いもあり、主人公2人の関係性などをあまりに端折りすぎ。おまけに、ただでさえ小難しい物語なのに時間軸いじりすぎ。そのため、スピード感だけはあるが、まったく話に入り込めないという状況に。羽住英一郎監督作だけに、とりあえず“『海猿』的な海上パニックもやりましたよ”なノリもあり、同じワーナーと組んだ『ワイルド7』級に、「どうなんだ?」な仕上がりに。ただ、ブルガリアでの路上爆破や列車アクションやら、女スパイ役でハン・ヒョジュまで出てくるキャスティングやら、近年の日本映画らしくないスケールのデカさに、★おまけ。
邦画の枠を超えたアクションの快作!
世界を股にかける物語。邦画にしては大きなスケールに、まず“おっ!”と目を見張った。ブルガリアで海外ロケは行なったとのことたが、それを頭に入れて見ても、映画のマジックというべきワールドワイドな展開に驚かされる。
何よりの驚きは肉弾アクションの迫力。ごまかしを排除して、肉体の動きをここまでつぶさに描写した日本映画では珍しい。ビジュアル的にも、原作を超えた試み。
アクション映画を偏愛する自分には嬉しい快作。正直、どうやって撮ったのだろう……という見せ場もある。藤原竜也がジェイソン・ボーに見えてくる、そんなダイナミズム。主人公について語られていないパートもあるだけに、ぜひ続編を作って欲しい。
真骨頂
監督の羽住英一郎。若き工作員の竹内涼真、フィクサー的な立ち位置の佐藤浩市。そしてこういう突拍子もない世界観に説得力を与えるならこの人・藤原竜也。
適材適所、各々の真骨頂を発揮した映画と言えるでしょう。同題小説に加えて、「森は知っている」パートまで映画に取り込む貪欲さも映画に密度を与えていてくれます。ブルガリアでの本格ロケも映画的なハッタリと見栄えを与えてくれました。
ハリウッド大作が公開されない中でスケール感を映画で感じたい人には是非にとお薦めしたい一本です。