聖なる泉の少女 (2017):映画短評
聖なる泉の少女 (2017)ライター2人の平均評価: 3
タルコフスキーを彷彿とさせる詩情豊かな作品
村の聖なる泉を先祖代々守ってきた老人が、3人の息子たちに跡取りを拒まれたことから、まだ若い娘に跡を継がせようとするものの、その娘もまたよそ者の青年に恋をして自由を渇望するようになる。ジョージア(グルジア)の古い民間伝承をヒントにした神話的なストーリー。宗教と伝統と個人の関係を紐解きつつ、西ジョージアの山深い村で暮らす人々の素朴な生活が詩情豊かに綴られていく。ただ、どちらかというとストーリーよりも映像で見せる作品。静寂に包まれた厳かなムード、神秘性をたたえた幻想的なビジュアル。どことなくタルコフスキーを彷彿とさせる。不思議な味わいの作品だ。
水の冷たさ、清浄さに浸らせてくれる
画面から、冷たく清浄な冷気が静かに漂ってくる。雪の降る北の山地、山に見守られた湖、その水面の滑らかさ。泉の水の冷たさ、清らかさ。その水の清浄さに浸っているだけで、伝わってくるものがある。
ストーリーは一応あるが、人々を癒す水が湧き出る聖なる泉、その泉を世話する老いた父親と娘、泉の力の減衰、という民話的古典的なもので、セリフも説明も最小限まで切り詰められている。その分、風景や建築物、生活用品、そこにあるすべての物が、雄弁に語りかけてくる。それに耳を澄ましながらこの世界の冷たさと清浄さを味わい、その心地よさに浸っていると、それが今、ここにはないということが静かに迫ってくる。