オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁 (2019):映画短評
オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁 (2019)ライター3人の平均評価: 1.7
ハリウッド映画の悪いところばかり真似した山岳アクション
インドの政府捜査官から極秘任務でエベレストの登山案内を依頼されたヒマラヤ救援隊チームが、機密文書を巡る陰謀工作に巻き込まれてしまうという中国産の山岳アクション…なのだが、まあ、これがなんとも大味なこと!ハリウッド映画にも負けない娯楽大作を!という意気込みは確かに伝わってくるし、実際に大掛かりなアクションの見せ場もたっぷり用意されているのだが、その一方でご都合主義全開のあり得ない展開の連続には苦笑いするばかりで、なんだかハリウッドの悪いところばかり真似しているなあという印象だ。ちなみに、中国語版はアフレコなのだが、役所広司の吹替が本人の声と違い過ぎてセリフが頭に入らない(笑)。
雪山のファイト一発!を、大らかな心で楽しめばいい
冒頭から、いきなり怒涛の雪上アクション。その、ありえないシチュエーションと勢いを受け止められるかどうかが、今作に入り込めるか否かのポイント。その後のサスペンスは大味で既視感があり、重要パートになりそうな人間関係も特にドラマを大きく動かすわけではない。妙にのんびりしたシーンが挿入されたりと、やや謎めいた構成ではあるので、豪快なスペクタクル部分を視覚と音で楽しむべき作品か。
吹替版で観たが、役所広司は本人の日本語セリフで、他のキャストは日本の声優(字幕版は逆に、役所のセリフが吹替となる)。本人の声と、当てた声が混じることで不思議な感覚がもたらされる。中国・日本の合作として斬新な体験にはなるはず
アクションとファンタジーが入り混じる中国的大作
ある陰謀に巻き込まれた山岳レスキューチームの必死の攻防が描かれ、役所広司が男気のあるリーダーを力強く演じている。雪山でのアクションも役者たちには相当にハードだったはずで、体当たり演技には拍手を送りたい。が、いかんせん物語が大雑把。陰謀のスケールが大きい割には悪党がショボく、悪に手を染めた理由にもほとんど説得力がない。さらにヒロイン主体の物語となる後半にファンタジー色が濃くなり、拍子抜けというか不思議というか……。ファンタジー・アクションを世界中から期待されている中国映画界の本気を見せたということか。