ラスト・ムービースター (2017):映画短評
ラスト・ムービースター (2017)ライター4人の平均評価: 4
ユーモアと哀愁、映画愛に満ちた脱”負け犬”ドラマ
故バート・レイノルズの晩年を重ねるのは映画ファンのお楽しみで、『脱出』『トランザム7000』の彼と、主人公の”共演”場面もあり、楽しく見た。
しかし本作の魅力は、やはりドラマの面白さにある。主人公は落ちぶれたスターで衰えた老人で、原題の”dog”が示す通り“負け犬”的なのだが、当人に負け犬意識を抱かせているものが何かをきっちり追及している点が妙味。それは同時に見る側の負け犬意識にも訴えかけてくる。
『デトロイト・ロック・シティ』でオタ愛を謳い上げた監督が物語る、愛すべき人々の物語。ユーモアとともに映画愛もしっかりとにじみ出る。当然、主人公を囲む映画オタたちの描写も好感度満点。
スターの“老い”は切ないだけじゃない!
人々の記憶から忘れ去られた老いぼれ俳優をバート・レイノルズが演じる、皮肉とも思える配役が抜群の効果を生んでいる人間ドラマ。バートの出演作や出演番組を上手に利用していて、往年のファンならニヤリのはず。スター街道を歩むために犠牲にした人生のあれこれを思い出し、後悔する場面ではバートが意外にもしっとり演技を披露する。演技力より身体的魅力が優っていた男優というイメージを覆すのが遅すぎだ。もったいない。本人に後悔の念があったのかも知りたくなった。
先読みできるストーリーだが満足度は高い。相手役のゴス娘を演じるA・ウィンターの弾けた演技が物語の魅力的なスパイスとなっていて、目が釘付け!
さらけ出すことの“大物”の余裕と粋
これはえらい泣ける! バート・レイノルズが等身大の老いぼれキャラと共に、数々の“Bad Choice”を繰り返してきたという自らのキャリアの「微妙さ」を堂々引き受けていること。リアルオタな風貌が絶品なクラーク・デュークや、エラー・コルトレーン(『6才のボクが、大人になるまで。』の彼!)が率いるファン・コミュニティ的な映画祭の様子も、タランティーノの「オレ基準」に通じるような映画マニアの純粋さも。
あくまでも“フォームを崩さない”レッドフォードの『さらば愛しきアウトロー』とは対照的なアプローチだが、共に「自分の見せ方(魅せ方)」は完璧に心得ているのが名優たるゆえんだ。結局かっこいいんだよな。
これが漢の生きる道
『シティヒート』で競演したイーストウッドに、同い年のレッドフォードと、先に公開された“終活映画”と比べても、見劣りしないバート・レイノルズ最期の雄姿! 大きな違いは、セックスシンボルでもあったタフガイが自虐ネタで笑い飛ばすことであり、ほぼ特殊メイク状態なチェビー・チェイスとの掛け合いも感慨深い。伝説のスターが手弁当すぎるナッシュビルの映画祭から逃亡し、孫ほども年齢離れたアテンド姐ちゃんとロードムービーを繰り広げる展開は、正攻法ともいえるが、そこはアダム・リフキン監督作。『トランザム7000』『脱出』の本編を使ったギミック・シーンを用意するなど、ノスタルジーに浸るだけに終わらせない。