グレタ GRETA (2018):映画短評
グレタ GRETA (2018)ライター3人の平均評価: 3.7
キャスティングで勝利、怖さは保証済み!?
ストーカーを題材にしたスリラーは多いが、母娘愛にそれを見出した作品は珍しい。ストーカーは娘を亡くした母。被害者は母と死別した悲しみを引きずる女性。感情面の裏付けとしては、これ以上ない設定だ。
物語は都会人の孤独と狂気を踏まえた端正なサイコサスペンス。貫禄十分のユペールと童顔のクロエが絡むことで絵的な説得力を生むばかりか、ストーカーと被害者の力関係もしっかり伝わる。キャスティングの勝利。
ありがちなスリラーといえばそれまでだが、スマホのアイテムとしての使用は現代的だし、ストーカーが年配であるぶん闇の深さも底知れない。上品な夫人の皮をかぶりつつ、不意に素の顔を見せるユペール。これは怖い。
ユペール様だから、怖すぎて笑える
最近、何かとコンプライスが取りざたされ、映画においても表現の「萎縮」を感じることも多くなったが、イザベル・ユペールには無縁だ。
冒頭から音楽も映像もスタイリッシュを装っているように、ユペール様のグレタも孤独で、お上品な女性を「演じて」いる。その実像があらわになる奇妙な喜びを観客が待つことに、監督もユペールも自覚的。ただ「立っている」だけで「怖いのに笑える」という奇跡のたたずまいを何度も目撃できる。
1980〜90年代の悪女スリラーを復活させた過激さは、現在、他のどのスター女優が演じても、このように笑って済ますことはできないだろう。まさにユペール様、映画界の「至宝」を実感できる逸品である。
サイコパスなマダムを演じるイザベル・ユペールが恐ろしい!
どことなく、『危険な情事』や『殺意の香り』といった’80年代サスペンスの雰囲気を漂わせたサイコ・スリラー。地下鉄で落し物のバッグを見つけたクロエ・グレース・モレッツが、親切心で届けた先の持ち主は、ニューヨークの片隅に暮らす孤独な中年フランス女性イザベル・ユペール。実はこれ、満たされぬ母性愛を拗らせたオバサマの仕掛けた巧妙な罠だった…ということで、餌に引っかかった善良な若い娘に一方的な母性愛を注ぎ、異様な執着心を燃やしてストーカーと化していくサイコパス・マダム、グレタを演じるユペールの恐ろしいことときたら!終盤の展開はご都合主義が目立つものの、それでもなお背筋のゾッとするものがある。