キング (2019):映画短評
キング (2019)君主が守るべきは支配層の利益か、それとも庶民の生活か
シェイクスピアの戯曲を下敷きに、斜に構えた未熟な放蕩王子から思慮深い国家君主へと成長していくイングランド王ヘンリー五世(ティモシー・シャラメ好演)を描いた歴史劇。解釈の分かれる原作の戦争観だが、本作は明確に反戦を打ち出す。戦争に明け暮れる父王に強く反発していた平和主義者のヘンリーが、私利私欲で戦争を推し進めたい大司教や家臣にまんまと騙され、フランス征服へと乗り出してしまう皮肉。いつの世も戦争はビジネスであり、どんな大義名分も言い訳にしか過ぎない。利益を貪るのは一部権力者のみ。そのために庶民の命と生活が犠牲となる。そんな戦争の利権構造を浮き彫りにしつつ、君主たるものの在り方が問われるわけだ。
この短評にはネタバレを含んでいます