エキストロ (2019):映画短評
エキストロ (2019)ライター2人の平均評価: 4
モキュメンタリーのひとつの教科書
ホストを務めるのは大林宣彦監督! ほっこりしたムードの中、主人公格として登場するのは余計なやる気を漲らせる64歳、萩野谷孝三さん。他にセンスなさすぎ、反応が薄すぎなど、色々なエキストラ傾向を提示しつつ、群れ&画面の中にヘンなもんが紛れ込んでいたことから驚きの展開を見せる。
後藤ひろひと脚本&村橋直樹監督の真価は「エキストラあるある」からの飛躍部分だろう。嘘を前提にリアルへとタッチしつつ、サプライズへの回路を広げるドキュメンタリー風フィクションというねじれた「逆説」の怒濤のハードル攻勢を全部チャーミングにすり抜けている。トリプルファイヤー feat.松崎しげるの主題歌はモキュならぬガチの名曲!
日本の映画界・テレビ界の裏側を描く秀逸なモキュメンタリー
映画やテレビドラマの撮影が日々行われているロケ施設を舞台に、本職の傍らでエキストラのアルバイトをするオジサンの日常を描いたモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)である。寺脇康文や斉藤由貴、山本耕史、大林宣彦、石井竜也などの著名人が、パロディ的な本人役として次々と登場。芝居の経験もなければ撮影現場にも不慣れなエキストラの巻き起こす珍騒動の数々に爆笑しつつ、プロのエキストラが成立するハリウッドと違って、素人のアルバイトに頼らざるを得ない日本の映画界・テレビ界の苦労と悲哀が滲む。バックステージ物の風刺コメディとしてなかなか秀逸だ。