ファーストラヴ (2021):映画短評
ファーストラヴ (2021)ライター3人の平均評価: 3.7
「わきまえた女」であることを強いられてきた女性たちの痛み
父親を殺害した容疑で逮捕されものの供述が二転三転する女子大生と、その動機の解明に取り組む公認心理士による緊迫した心理戦を描いたサスペンスなのだが、やはり注目すべきは事件の背景に横たわる日本社会の根深い男尊女卑の風潮にあるだろう。浮かび上がるのは、男性にとって都合の良い「わきまえた女」であることを強いられ、「嫌だ」という抵抗の声を封じられてきた女性たちの、世代を超えて心に刻まれた深い傷の痛み。一見したところ加害者側に思える女性もまたその被害者だ。奇しくも東京五輪組織委員会会長の女性蔑視発言が問題視される中、今の日本人が真剣に向き合わねばならないテーマを孕んだ映画であることは間違いない。
Uruが歌い上げる主題歌・挿入歌の破壊力
かなり人間関係が入り組んだ原作を、事件中心のシンプルな構成に脚色したぶん、Wヒロインのトラウマものにまとまってしまった感が強い。過去には「シリアス系なら大丈夫」感があった堤幸彦監督作だが、ドローン多用など、あざといカットはまだしも、同じ家族モノである『望み』に続き、どうもモノ足りなさが残る。しかも、面会室のシーンはいいが、北川景子と芳根京子の演技バトルばかり期待すると、やや肩透かしを受けるだろう。スペシャルドラマのような趣が強いなか、Uruが歌い上げる主題歌・挿入歌の破壊力に加え、心理師のヒロインを取り巻く中村倫也と窪塚洋介が演じる義兄弟キャラに関しては魅力的に捉えている。
愛の在り方
愛というモノを様々な形で描くヒューマンサスペンス。
これまで平手友梨奈、浜辺美波を受け止めてきた北川景子が、感情のふり幅の大きな芳根京子をがっつり受け止めます。
対照的な義兄弟を演じる中村倫也と窪塚洋介。
中村倫也の何とも言えない浮遊感はサスペンス、ミステリーにはまる。今までで一番何もしていない窪塚洋介のキャラクターも彼が演じることでなんとも言えない影を感じさせる。堤幸彦監督も含めて適材適所感を感じさせる父親殺しを巡るサスペンドラマ。