娘は戦場で生まれた (2019):映画短評
娘は戦場で生まれた (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
パワフルでリアル、これが映像の力だ!
内戦下のシリア・アレッポでサバイバルする人々の実像がずしんずしんと胸に迫ってくる。女子大生ワアドの「恋に落ちて結婚し、女児サマを出産」という普通の人生と、爆撃や死に満ちた日常が並行する不条理こそが戦争の恐ろしさだ。反政府デモをスマホで撮影し始めた彼女がやがて、娘のために“今”を記録すると決意したあたりから映像のドラマ性も増す。赤ん坊や幼児にも容赦無く襲いかかる死すらもビデオに収めるワアドだが、被写体に寄り添う映像から伝わるのは怒りと悲しみと恐れ。カメラアングルや照明などとは無縁だが、どのシーンもパワフルでリアル。見ている間中、緊張しっぱなしで、映像の力を実感した。
内戦の中で生きる人の現実を強烈に叩きつける
ニュースでは耳にしてもシリアの状況に注意を払っていなかったという人は、今作に大きな衝撃を受けるはず。アレッポに住む若い女性がスマホで撮影した映像でつづる今作は、血を見ること、知り合いが死ぬことが日常という、残酷な現実を叩きつけてくる。そんな中でも時には笑うし、恋もする。彼女も医師と結婚し、かわいい娘を生んだ。この子をこんな世の中に送り込んでよかったのか。そう自問することはあっても、夫妻は、あえてこの地にとどまり、自由のために抵抗を続けようとするのだ。その姿勢に心を打たれると同時に、「子供には何の罪もないのに」「なぜ外の人は助けようとしてくれしないのか」という言葉が耳に残ってやまない。