デンジャー・クロース 極限着弾 (2018):映画短評
デンジャー・クロース 極限着弾 (2018)ライター3人の平均評価: 3
戦争アクションへの「集中度」がスゴい
ベトナム戦争にオーストラリア軍が参加したという知られざる歴史にフォーカスするだけでも貴重。冒頭こそ、慰問のバンドが来たりして横道エピソードがあるが、ほぼ全編、戦闘の現場と、たまに司令の基地という構成で、徹底的に戦争アクションに集中する。単調にも感じられるが、その潔さに圧倒された末に、戦った後に何が残るのかという虚しさを喚起することに。
有名スターが出演していないうえに、戦地で混乱状態になるので、人間関係やキャラがわかりづらいが、その分、誰が犠牲になるのか予知できないスリルはある。何より、現代とは違って「精度の低い」砲撃作戦が、標的がズレて味方を死なせるバクチ的な恐ろしさを体感させてくれる。
そこはやっぱり裏切らない、オージー産戦争映画
『コラテラル』の脚本家、スチュアート・ビーティーがプロデューサーから依頼されたのは、“ベトナム戦争版『300〈スリーハンドレッド〉』”。そのため、事実とはいえ、明らかに劣勢状況からの壮絶な戦いがねっとりと描かれる。もちろん、一度ネジが外れたらヤバいオージー産の戦争映画だけに、タイトル通りの状況になるクライマックスはかなりエネルギッシュ。ジャングルに追い詰められた小隊を率いる少佐もいいが、砲兵隊のマッチョな面々もいい味出しまくり。軍の階級格差や対立なども描かれ、リアルなのは間違いないが、ドラマ性に乏しいのは事実。『プラトーン』より『ハンバーガー・ヒル』寄りな人におススメな一本である。
ベトナム戦争の知られざる激戦をリアルに再現
反共軍事同盟としてベトナム戦争に参戦したオーストラリア軍が体験した知られざる激戦の映画化で、史実に忠実に描いている。激しい攻防戦のなか、仲間を救うために上官に逆らい、身の危険を承知で “デンジャー・クロース”を要請する兵士の姿から戦闘のリアリティと緊迫感が伝わってきて、見ているだけでも体がこわばる。歴史を振り返ると、政治的には過ちだったとされるベトナム戦争だが、参戦した当事者たちの心情はいかに? 名もなきヒーローとなった戦死者へのC・ステンダーズ監督の敬意が伝わる作品だ。