ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち (2017):映画短評
ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち (2017)ライター2人の平均評価: 4
発展するなら、まじわるべし
ネイティブアメリカンの血を引くミュージシャンたちの歴史をたどり、彼らが残した功績を称える。が、インディアンの音楽を賞賛するのみにとどまらないのがミソ。
黒人音楽と結びつくことでブルースやロックンロールを発展させ、その影響はフォークからヒップホップにまでおよぶ。そこに浮かび上がるのは、文化の美しいミクスチャー。背景に異人種婚があることも興味深く、音楽ドキュメンタリーの枠を越えて多くを物語る。
血が混ざり合うことで若々しい思想が生まれ、文化が混ざり合うことでムーブメントが起こる。“ひとりでこもっていてはダメだ”というR・カスティーヨの言葉は、分断の現代に重く響く。芳醇な秀作。
米国のポピュラー音楽史をネイティヴ・アメリカン軸で再読する
まさに目から鱗の一本でもの凄く勉強になった。確かにブルースやロック、ジャズ、またフォークも、筆者自身「黒人か、白人か」の二元論に囚われてきたように思う。例えばチェロキー族の血を引いていることがよく知られるジミヘンさえ、アフリカ系の方に意識が集中していた。
絶大な影響力を持つ“The Rumble Man”リンク・レイの「放送禁止歌」ならぬインスト曲を看板にしたのは設計の勝利(レイを信奉するMC5のウェイン・クレイマーによりパンクやメタルにまで早々に補助線が引かれる)。そしてR・ロバートソンの「昔はこんな話も余りできなかった」との一言。ルーツミュージックの探求は差別の歴史を巡る旅でもあるのだ。