グッド・ワイフ (2018):映画短評
グッド・ワイフ (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
経済破綻でわかる選ばれた女=セレブ妻の虚しさ
1982年のメキシコ債務危機によってセレブ主婦が覚醒する姿を描いているが、主人公がまず退屈。ブランド品ショッピングとテニス、他人の噂話に明け暮れる日々。フリオ・イグレシアスに歌を捧げられるのは夢らしいが、すべてにおいてバカすぎる。セレブ妻仲間のマウンティングも「は?」な感じで、リッチな男と不倫&略奪婚した若妻をバカにするあたりも実に嫌ったらしい。セレブ妻って結局、夫の資産で立ち位置が決まるわけで、他人の金頼りの人生の虚しいこと。デヴィ夫人の「選ばれる女におなりなさい」愛読者は本作を見て、よく考えたほうがいいね。
メキシコシティのジャスミン、ブランチ
『ブルージャスミン』や『欲望という名の電車』の前日談といった趣か。ポルティーヨ政権下の82年。露骨に勝ち組を気取った「クソ金持ち」のマダムに没落の足音が近づき、表面だけ取り繕いながらも属するサークルから脱落していく。「このカードは使えません」辺りからのヒヤッとしたホラー的演出が冴える。
経済の終わりは世界の終わり、といったシステム(と感覚)の中に否応なく我々は生かされていて、こぼれ落ちた先に待ち構えるのは「死」の匂いである。フラメンコの手拍子、ライバル妻との視線の高低、フレオ・イグレシアスや肩パットといったシンボル等の小技は総て意図が明確で、「番犬」のイメージを引っ繰り返した幕切れも鮮やか。