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ソニア ナチスの女スパイ (2019):映画短評

ソニア ナチスの女スパイ (2019)

2020年9月11日公開 110分

ソニア ナチスの女スパイ
Copyright (C) 2019, The Spy AS BR・F, Film i Vast, Scope Pictures, Nordisk Film Danmark - All rights reserved

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

なかざわひでゆき

誰もが政治と無関係ではいられない

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ナチス・ドイツ占領下のノルウェー。私はただの女優、純粋に仕事をしたいだけで政治には関心がない。そういってナチスのプロパガンダ映画の仕事も躊躇せず引き受けていたスター女優が、それゆえに己の立場を明確にせねばならない緊急事態へと追い込まれ、秘かに隣国スウェーデンの諜報部に協力してナチスの内情を探るスパイとなる。’30~’40年代に活躍したノルウェー人の有名な映画スター、ソニア・ヴィーゲットの実話。何事もない平和な時代ならばともかく、日々の生活と直結する政治とは誰もが無関係でいられないことを思い知らされる。結局、世間からは売国奴と誤解されたわけだから、ソニアにとってその代償は大きかったと言えよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

"売国奴"になれなんて、言われてみても

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 北欧がナチスの侵攻にどう反応したのか、その歴史的事実を知るだけでも価値があるが、ドラマも歯応え十分。

 ある女優がたどった数奇な運命をとおして、戦争の虚しさを語るストーリー。人気の一方で、二重スパイという複雑な任務を強いられたために、意図に反して売国奴と罵られたり。文化を愛する者の思いを戦争が踏みにじる、そんな構図が見えてくる。

 “個人に選択を強いるのが戦争というもの”というナレーションが冒頭で発せられるが、見れば納得。スパイ映画らしいスリリングな描写にも魅せられるが、むしろ伝えるべきテーマの重さに唸った。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

優れた才能ゆえに平凡に生きられなかった女優の秘話

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

第二次大戦中の女スパイの物語と聞くとちょっとワクワクするが、実話なので当事者である女優ソニア・ヴィーゲットにただただ同情するのみ。どちらかというとノンポリで、父親から「立ち位置を明確に」と諭されたソニアが、ナチスに逮捕された父親を解放させようとナチスのお偉いさんに接近するあたりから、緊張感が増す。死と背中合わせの諜報戦に身を投じ、持ち前の演技力で危険を乗り越えた先にあったものは? 優れた才能ゆえに時代に翻弄されたソニアが失ったものが多過ぎて、戦争の虚しさを感じるのみ。I・B・ベルダルが身に着ける40年代の女優らしいグラマラスな衣装や全体的にノスタルジックな色彩も魅力的。

この短評にはネタバレを含んでいます
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