相撲道~サムライを継ぐ者たち~ (2020):映画短評
相撲道~サムライを継ぐ者たち~ (2020)ライター3人の平均評価: 4
多角的に分析された相撲に俄然興味が湧いてきた
相撲には無知だったけれど、国技館で力士の勝負を生で見たいと思わせるドキュメンタリーだった。力士の勝負にかける意気込みや「勝つ」ことへのこだわりが伝わり、正真正銘のプロ・アスリートと納得する。稽古中に人肉が衝突するときの重々しい音が大迫力だ。稽古や日常に密着し、力士の本音を引き出す監督の手腕が素晴らしい。漫画や相撲通のコメントなどを挿入し、競技の歴史やカルチャーを多角的に解説する構成なので、相撲初心者でもわかりやすかった。力士の着物がチャーミングなのも新発見! そして痛快なのが、焼肉屋での力士の豪快な食べっぷり。店の肉と米を食い尽くすイナゴのような旺盛な食欲に驚愕だが、これぞ力士なり!
人間と文化背景から紐解く大相撲の真髄
今までありそうでなかった大相撲のドキュメンタリー。親方や先輩との厳しい稽古に耐えることで力士の成長を促す集団主義的な境川部屋と、それぞれの力士が己との闘いによって成長するよう個を尊重する個人主義的な高田川部屋。この全く対照的な2つの部屋の日常にカメラが密着することで、普段あまり与り知ることのない相撲力士たちの素顔と日本の国技である大相撲の真髄を紐解いていく。競技そのものよりも人間や文化背景に焦点を絞っているところがミソ。筆者のように相撲への関心が薄い観客にとっては、なぜ大勢の人々が相撲に魅せられるのかという理由の一端を垣間見ることが出来るだろう。
毎日が交通事故!? 力士の美学に迫る!
大相撲を支えるいくつかの柱を俯瞰させる本作。スポーツ性、国技、興行など、さまざまな切り口が詰まっており、それらがバランスを取りながら成立していることが、よくわかる。
とはいえ、やはり目が行くのは土俵の主役である力士たちだ。200キロ近い巨体がぶつかり合う取組を、“毎日が交通事故”と笑って語る力士の言葉が心に残る。怪我が絶えないのも納得。
それでも力士たちは痛みをこらえて土俵に上がる。痛いことを痛いと口に出さないことが力士の美学。それが良いか悪いかは別として、結局のところ、彼らの自己表現の場は土俵の上でしかない。勝つも負けるも自分を表わす。そんな姿勢に“サムライ”の本質が垣間見える。