DUNE/デューン 砂の惑星 (2020):映画短評
DUNE/デューン 砂の惑星 (2020)ライター6人の平均評価: 4.3
スペクタクルシリーズの王道を行く
リンチ版に慣れた身には、はじめは“ドラマの進行具合、遅くないか!?”と思ったが、続編があると知れば、なるほど、だ。
そもそも原作からして長編だし、主人公の“覚醒”に焦点を絞った内容からも、その途中で終わっても納得がいく。『ロード・オブ・ザ・リング』の一作目を見終えたときにも似た充足感。
リンチ版とは異なるビジュアルの構築は、異様さよりも迫力を重視したヴィルヌーヴ監督流。どう見ても砂漠で生き残れるように見えないシャラメの華奢なキャラも活き、とにかく次が早く見たくなる。
IMAXで見るべき壮大でドラマティックなSF叙事詩
芸術的なSFワールドを創造するのが得意なD・ヴィルヌーヴ監督の本領発揮で、惑星デューンを含む宇宙全体の世界観に圧倒される。惑星の風景や飛行機などのガジェット類、衣装や美術など見るべきものが多すぎて、一瞬たりとも気が抜けない! 監督の底知れぬ想像力と最新技術の融合のおかげで架空の世界とは思えないし、凝ったディテールをIMAXで楽しみたい作品だ。ポールを演じるT・シャラメはじめとする役者陣はキャラクターをしっかりと体現していて、特にダンカン役のJ・モモアと悪役(?)S・スカルスガルドが印象に残った。チャニを演じるゼンデイヤの活躍は続編まで持ち越しだが、ファン心をくすぐるクリフハンガーなり。
破格の映像体験
映画化に困難を極めもはや“禁断の果実”となりつつあった『DUNE/砂の惑星』。その映像化に挑んだのがドゥニ・ヴィルヌーブ。『ブレードランナー』の続編を引き受けた男が渾身のスペースオペラを作り上げました。
とにかく、破格のスケール感が満ち満ちた映像に素直に驚きましょう。映画・原作が過剰に神格化されて、映画ファンの熱量が高まりすぎな感もありますが、映画自体は想像以上に親切設計で、一切予習なしで見てもいいと思います。そして、なんと言っても出ずっぱりのオールスターキャストは見ているだけで楽しいです。とにかくできるだけ大きなフォーマットで映像を浴びてください。
『ロード・オブ・ザ・リング』にも通じる映像体験
相変わらず怖いもの知らずのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だが、今回ももれなくいい仕事をしている。前作『ブレードランナー 2049』同様、複雑に絡み合ったテーマを持ち前の手際の良さでまとめ上げ、一見さんにも優しい作りに。それでいて、原作ファンを裏切ることのないダイナミックな演出を畳みかける。おまけに、焦らしまくった末のサンドワーム登場のほか、トンボのように翼を動かして進むオーニソプターや輸送機などのマシーンやガジェットの造形に、とにかく胸躍る。正式タイトルに「PART 1」が付くように、2021年の映画のテンポとは言えない荘厳さだが、『ロード・オブ・ザ・リング』にも通じる映像体験といえる。
目と耳をただ無心にゆだねれば、物語を体感できる
映画冒頭、デューンの砂漠と共に出現するハンス・ジマーによる音楽の中に、砂が擦れ合う音が聞こえて、"ああ、これはサンドワームを呼ぶ起振杭/ザンパーの音だ"と思った瞬間、すでにこの映画の世界に取り込まれてしまっている。砂漠の砂が滑らかすぎる質感なのは、それが地球の砂とは異なる成分からなるため。目と耳をただ無心に映画にゆだねていれば、この物語を体感できる。全身で没入するために、画面は大きいほうがいい。
10代の頃から原作が愛読書だというヴィルヌーヴ監督は、原作への敬意と共に大筋は原作に添って描くが、原作のどの要素を抽出し、どう演出したかに、監督の意図は明確。ヴィルヌーヴ版デューンが屹立する。
映像に飲み込まれるような感覚。これこそSF大作の醍醐味
原作や過去の映画版との比較は忘れ、2021年のSF映画として素直に向き合えば、大スクリーンで体感すべき映像と音の効果にひたすら酔いしれる。
宇宙船や砂虫など巨大物体に対し、人間が圧倒的に畏敬をおぼえるアングル。ダーク&スタイリッシュなカラーに徹した背景、スペクタクルな動きをあえて静謐に見せる…など、ヴィルヌーヴ監督、独特のビジュアルセンスと様式美的演出で、マニアックな要素も神話性を帯び、荘厳な気分へ導かれていく。大小のガジェット・衣装などプロダクションデザインで、これほど心がざわめいたのも異例。
あくまでも続編を想定した作りなので、単体としてストーリー全体のバランスは、やや疑問が残るけど。