エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット (2020):映画短評
エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
レコード・ジャケットが思い起こさせる懐かしき胸のときめき
かつてレコード・ジャケットは、音楽ファンにとって重要な情報源だった。それぞれに趣向を凝らした表面のアート・デザインは無論のこと、裏面にクレジットされたソングライターやプロデューサーなどの名前を目で追いつつ、未知なる音楽の中身を想像して期待に胸を膨らませながらレコードをレジへ持っていく。当然ながら、当りもあれば外れもある。そうやって一か八かのジャケ買いを繰り返しているうちに、いつしか自分だけの「好きな音楽」を見つける選択眼が磨かれたものだった。ジャケット・デザイナーを生業とする菅谷晋一の仕事に迫る本作は、そんな忘れかけたときめきを全ての音楽ファンに思い起こさせてくれるだろう。
好きなことを続けて実りがあるのは、才能があるから
ザ・クロマニヨンズの分身こと高橋ヨシオの生みの親であるデザイナー、菅谷氏の仕事ぶりが感動的だ。受け取った音源を聞いてアイデアが沸いた氏が向かうのは、パソコンではなくて紙。さらには、油絵を描いたり、彫刻を作ったり。アナログ手法とも言える独特な仕事ぶりはもはや芸術家。氏が語る音楽との関わりや経歴、そしてヨシオ誕生秘話なども知らなかったことばかり! 彼をよく知るミュージシャンや音楽プロデューサー、雑誌編集者のコメントも面白く、菅谷氏の人となりをしっかり伝える映画になっている。好きなことに夢中になればいいとは思うけど、素晴らしいものを生み出すには氏のように才能がないとね。