Away (2019):映画短評
Away (2019)ライター4人の平均評価: 4.3
見る側が自由に想像力を膨らませられる傑作アニメ!
飛行機事故で生き残った少年のサバイバルと心象風景をシンプルな絵で表現しているが、ジブリやピクサーにも負けてない傑作。セリフがないので見る側には想像力が必要だが、逆に少年が遭遇する黄色い小鳥や水辺に集まる猫、砂漠のオアシスや氷のような湖、そして少年を追いかけてくる黒い怪物が何を意味しているのかを自由に考えられる楽しみにつながっている。少年が乗り越えるハードルごとにチャプターが分かれているのはゲームっぽいが、監督・脚本・編集・音楽を独力で行なったG・ジルバロディス監督はまだ20代とのことで、納得。とんでもない逸材の出現だし、今後の活躍が楽しみだ。
宮崎駿作品からの影響も濃厚なラトヴィア産アニメーション
バルト三国のひとつラトヴィアからやって来た、美しくもどこか切なさの漂うファンタジックなアニメーション。パラシュートで見知らぬ島へ落下した少年が、人間のような姿をした巨大な黒い物体に追われつつも、原生林や岩山などの広がる島を黄色い小鳥と共に駆け抜けていく。一言のセリフもないまま描かれる、夢とも幻とも現実ともつかぬ不思議な物語。黒い物体は何を象徴するのか、少年は何に突き動かされて前へ進むのか、その先に待つのは何なのか。『未来少年コナン』やバスター・キートン、アルフォンソ・キュアロンなどにインスパイアされたという映像がまた独特な味わい。これを監督たった1人で3年半かけて作ったというのは驚きだ。
やわらかな夢がどこまでも続いていく
目を開けながら見る夢のように風景がどんどん変わっていく。何もかもが、けして止まることなく、滑らかに動き続ける。物に色と形はあるが輪郭はない。作品中にはまったく言葉が使われていないのに、見ていてうっかり"これはこういう意味だろうか"と言葉を使って考えてしまいそうになるシーンも出てくるが、すぐに、しかしそれは必要なく、むしろそれをやってしまうとどこかで必要なものを見落としてしまうのではないかと思われてくる。見たことがあるわけではないのに、まったく知らないわけではない風景のようなもの。水、光、風といったものが動き続ける心地よさがずっと続いて、気持ちがやわらかなままでいることが出来る。
芳醇なイマジネーションに酔う
セリフなし、しかし映像はひたすら芳醇。81分間の映像体験は、見る者のイマジネーションを刺激するに十分だ。
物語は基本的に、拾った地図を頼りにして孤島の出口を探す少年の冒険劇。緑豊かな林の風景から、断崖、砂漠、岩山、そして雪山へと、映像は変化。その詩的な美しさに、音楽の効果も手伝い、見入ってしまう。
主人公を追ってくる巨人は“死”のメタファーか? 春夏秋冬をたどるかのような大自然の風景の変遷は、人の一生の暗示か? そんなことを考えながら見たが、そういう意味でも芳醇。監督は、これをひとりで作り上げたと言うが、詩情のみずみずしさは初期の新海誠の手腕を連想させる。