フィールズ・グッド・マン (2020):映画短評
フィールズ・グッド・マン (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
カエル大戦争
近年の香港民主化デモを象徴するキャラとして知られる「カエルのペペ」。それから遡ること15年前、作者自身を投影した、ゆるキャラとして誕生。彼の一言「気持ちいいぜ」のクソコラが、4ちゃんねらーに愛されたと思いきや、後にアメリカ全土を揺るがす大騒動に発展! ドヤ顔ペペと大統領選に立候補したドナルド・トランプとの関係性など、日本では報道されなかった真実に驚愕する。作者が意図しなかった方向へ進み、気づけば“世界一悪名高いカエル”になっていたという恐ろしさは、ネット社会において、クリエイターでなくとも他人事ではいられないはず。入口こそキャッチーだが、かなりガツンと喰らう力作。
ポピュリズムの戦場
あまりに現代的で、凶悪な「祭り」の記録。米コミックの人気作『ボーイズ・クラブ』に登場するキャラクター、カエルのペペが辿った数奇な運命――ネットメディアで拡大する自由なN次創作による「意味」の変換に次ぐ変換。まるで『グレムリン』のように、邪悪なペペの亜種が増殖して手がつけられなくなってしまう。
単なるアイコン=記号が「自律的な生きもの」に育って想定外のパワーを持ってしまうのはSNS独特の現象かもしれない。特に単一のイメージに還元された、わかりやすく俗ウケする刺激的な投稿が氾濫。2016年の大統領選ではトランプ陣営がそれを政治利用したが、「ペペ祭り」に似た喧噪は今日も至る所で繰り返されている。