翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ (2023):映画短評
翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ (2023)ライター4人の平均評価: 3.8
思いのほか大作の近畿地方新世紀!
和歌山出身の筆者としては見逃すわけにはいかぬ一本だが、ひたすら面白かった(笑)。伝説の自虐系ご当地ソング、一発逆転(ウインズ/ウインズ平阪)の「キンキのおまけ」(86年)のネタは出てこなかったものの、滋賀と和歌山、奈良がイジられるヒエラルキーは当時から変わらず。それより大阪府知事役の片岡愛之助が悪すぎて「粉もん」の魔力も際立っている!
551の『チャリチョコ』も登場するが、蓬莱ってたこ焼きあったか?などのツッコミはありつつも、細かいことは気にしない大味のステレオタイプが本作の美点。パロディ的配役も良し。地域偏差や分断が世界をシリアスに覆う現在だが、ギャグで笑い飛ばすのはコレだけかもしれない!
ザッツ吉本! ザッツ宝塚!
「埼玉解放戦線」の偉業が伝説として、ラジオで語られる前作と同じ構成で幕を開けるなか、さっそく阿久津翔(伊勢谷友介)の不在理由についてツッコミを入れる悪ノリっぷりは、さすが! 今度は関西が舞台だけに、“ザッツ吉本”な『チャリチョコ』パロディなど、コテコテな展開になっており、謎のしゃくれ現象なども爆笑だが、今度も麗と百美のバディ感を楽しみたかったのは事実。二階堂ふみの存在感が薄くなった分、“ザッツ宝塚”な杏が美味しいとこ取り状態だが、終盤に控える、おなじみ出身芸能人対決に関しては、もうちょい捻りが欲しかった感も。前作超えはならずとも、お祭り映画として、これはこれで面白い!
“お国自虐”は続く
愚かでしかないコミュニティの分断を、ナンセンスなギャグとともに笑い飛ばした、そんな前作のノリを踏襲する続編。
埼玉県民の一家がカーラジオで聞いている都市伝説のビジュアル化というフォーマットは前作と同様。埼玉から関西圏へとエリアを拡大し、“お国自慢”ならぬ“お国自虐”をさらに多角度から展開する。スケールの大きさを含め、前作のファンの期待に応えるつくり。
くだらないと言ってしまえばそれまでだが、むやみにアツくなるエピソードもあるし、ヒエラルキーにとらわれがちな社会の現実も見えてくる。悪役設定は某政党への風刺!?
悪ノリリターンズ
今回は滋賀県をディスります。タイトルとは裏腹に関西が舞台です。関西圏における埼玉県的な立ち位置の都道府県を探したところ滋賀県にたどり着いたというところでしょうか?個人的にはそうは言っても実際には首都圏の埼玉県とベッドタウンの滋賀県とではちょっと違うのではないかと思うところですが、いかがでしょうか。もともと1作目の序盤の時点で原作を使い切っているために、今回は完全オリジナルゆえに魔夜峰央テイストが少し薄まったかなとも思います。気になる所もあるにはあるのですが、それでも笑ってしまったので作品の勝ちですね。