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キャンディマン (2021):映画短評

キャンディマン (2021)

2021年10月15日公開 91分

キャンディマン
(C) 2020 Universal Pictures and MGM Pictures. All Rights Reserved. CANDYMAN TM MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

今もなお絶えることのない怨念の連鎖

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 都市伝説ホラー『キャンディマン』シリーズの第4弾だが、ストーリー的には1作目の直接的な続編に当たる。舞台も同じカブリニ=グリーン地区だが、かつての黒人貧困層向け公営団地は富裕層向けの高級マンションへと変貌。黒人を取り巻く社会的環境の大きな変化を映し出しつつも、殺人鬼キャンディマンを米国史における黒人(特に男性)への差別と暴力の象徴と捉えることで、今もなお絶えることのない怨念の連鎖を浮かび上がらせていく。ジョーダン・ピールらしい示唆に富んだ脚本、ニア・ダコスタ監督の空間を歪ませた不穏なカメラワークと寓話的な語り口が秀逸。差別がなくならない限り、キャンディマンの呪いも受け継がれていくのだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

人種問題にきっちり目配せした意識の高い続編

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1992年の『キャンディマン』は以後2本の続編が製作されている。21世紀の『キャンディマン』は、それらを見ていなくても問題はない。が、一作目を見ておいた方が、本作のメッセージは伝わりやすいだろう。

 そもそも“キャンディマン”は当時には珍しい黒人のホラーキャラ。本作では、その恐怖に直面する主人公も黒人に設定して、BLM運動以後の社会性を強く打ち出している。もちろん殺りく場面は鮮烈で、ホラー強度も高い。

 製作・脚本をJ・ピールが務めているのも見れば納得。『キャプテン・マーベル』の続編にも起用された俊英N・ダコスタの、キャラクター主導型の硬派なドラマ作りも光る。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

物語を振り返るエンドロール、そこだけで短編賞を授与したい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ジャンル的にはホラーかもしれないが、ホラーに該当する衝撃シーンが、けっこうスタイリッシュな映像で演出されたりしてるので、怖さに抵抗がある人にも比較的、安心。かと言って物足りないわけでなく、鏡や窓の効果的使用、日常に降りかかる謎の現象など、恐怖演出のセオリーをきっちり見せてくれ、極上スリラーの味わいだ。

前作を頭に入れておいた方がベターだけれど、そうでなくても物語は把握できる。現代っぽく人種問題がテーマとしてせり出してくるものの、都市伝説、および主人公の不可解体験&試練という本道は崩れず、押し付けがましくないのも好印象。そのテーマもさりげなく込めたエンドロールは、まさにアートの極みであった。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

影絵の人形劇と現代アートが交錯。映像美で魅了する

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 影絵の人形劇による予告編を見た時から、この映画は視覚表現で魅了してくれるだろうと予感した。その影絵は本編でも、昔話が語られるときに現れる。本作の原型は都市伝説という現代のお伽話。なので、影絵の持つ子供の遊戯のイメージと、影なので皮膚の色は反映されないという性質がよく似合う。
 それを筆頭に、冒頭から映像美で魅了する。飛び回る蜂/キャンディの柔らかなイメージと、現代建築/現代美術の硬質で冷たいイメージが対比的に登場、だがある視点から映し出された林立する建築群は、蜂の巣のようにも見えてくる。そういう世界で、人間にはなぜ伝説が必要なのかを描き出す。この監督のマーベル映画『ザ・マーベルズ』も期待大。

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村松 健太郎

ジョーダン・ピールである意味

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

クラシックなスラッシャー、スプラッターホラーのリブート、リメイクもひと段落かなと思ったところで、まさかまさかの『キャンディマン』が登場。
良く、このタイトルを見つけてきたなぁと思いつつ、このタイミングでなぜ『キャンディマン』の映画なのか?とも思ったのですが、仕掛け人がジョーダン・ピールと聞いて納得。この映画の裏にあるテーマを現代的に見事にアップデートし『ゲット・アウト』から続く、新しい時代の”ブラック・ホラー映画”の重要な一本に仕上げました。お見事です。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

人種差別に対する強いメッセージが伝わってくる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

19世紀の人種差別から生まれたキャンディマンのバックストーリーは、92年のオリジナルでも説明されたものの、深くは突っ込まれなかった。ジョーダン・ピールが製作する今作では、そこがかなり強調される。物語、セリフ、ディテールを通じ、現代社会で黒人がまだ受け続けている不当な扱いの多々について触れられるのだ。オリジナルへのオマージュはたっぷり。とくに話の繋げ方には興奮した(ただしオリジナルを見ていなくてもわかるようになっている)。主人公を現代の画家にしたことで(これまたキャンディマンのオリジンへのオマージュ)、ビジュアル的にモダンで前と違ったものになっている。恐怖、不安、好奇心を高める鏡の使い方もいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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