シン・仮面ライダー (2023):映画短評
シン・仮面ライダー (2023)ライター4人の平均評価: 2.8
ひとつの「様式美」として受け止めたい
思わぬタイミングでノスタルジー喚起の「アイテム」「音」「描写」に、リアタイで初期ライダーに夢中になった心がときめく。各オーグ周辺のプロダクションデザインも飽きない楽しさ。
感情も含め説明的セリフがノンストップ→必然的に俳優は棒読みに(意図的な演出だろう)→結果、物語がサラサラ流れていく感覚。悲壮な思いや決意、喪失も軽やかに(このあたりは同じく多セリフのシン・ゴジと大きく異なる)。
アクションもどぎつさを瞬間的に織り込みつつ「タメ」は回避され、矢継ぎ早な編集でサラッと終わってしまう印象(ダンサー森山未來、もうちょい観たい!)
ただ、これらすべて監督の「様式美」と受け入れられれば問題ナシ。
キャスティングの巧さを痛感
「ライダー」だけじゃない石ノ森章太郎リスペクトが吹き荒れるなか、緑川博士こと塚本晋也監督による池松壮亮主演作『斬、』との共通点や、当初は身長が気になるものの、どんどん綾波レイにしか見えなくなる浜辺美波の緑川ルリ子などを踏まえると、キャスティングの巧さを痛感。そこに、おなじみ“政府の男”を絡ませるのも見事すぎるし、コウモリオーグのアジトと化す河口湖ステラシアターなどのロケーションもなかなか興味深い。それだけに、西野七瀬がさらに映えまくるハチオーグ戦以降、それまで全開していたケレン味が薄まってしまったのは惜しまれるところ。ただ、それによりカルト性が強まった感もある。
ダブルライダー揃い踏みの興奮
ダブルライダー揃い踏みの興奮、本郷猛の哀しみ、一文字隼人の孤独、緑川ルリ子の可憐さ、工場をはじめとする無機質な構造物、シンメトリカルな構図、分岐する引き込み線、次々に登場する意外なキャスト(エンドクレジットでもう一度驚く)、現代の状況を鑑みたテーマ設定と昭和のテレビまんがっぽさ、そして何より隅々まで行き渡ったオリジナル『仮面ライダー』への愛とこだわり。これが『シン・仮面ライダー』の主な構成要素だろうか。さまざまなバランスを取ろうとしているが、結果的にバランスを逸しているのが愛らしい。本作を隅から隅まで堪能できる人は、きっと庵野秀明監督と朝まで楽しく語り明かせることだろう。
(一部内容に触れます)まごうことなき庵野作品
最速上映にて。まごうことなき庵野秀明監督作品でした。これに比べれば『シン・ゴジラ』も『シン・ウルトラマン』も口当たりが優しい。庵野監督が”仮面ライダー”にこだわり続ける気持ちが伝わってくる映画でした。一方でライダー関連、石ノ森章太郎関連についてのリテラシーは必要かと思います。”シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース”にとっても非常に重要な位置づけの作品です。この作品がどう受け入れられるか、公開後の流れも非常に楽しみです。暗所も含めたアクションがかなりスピーディなのでできるだけ画のいいスクリーンがお薦め。演者の胸をかき乱すという言葉が相応しい、