白いトリュフの宿る森 (2020):映画短評
白いトリュフの宿る森 (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
その香り、たまらなく嗅ぎたくなります!
明らかに最近のどんな映画とも違う、ゆったりした豊穣な時間に包まれる。トリュフハンターたちの日常は基本的に静かで穏やか。そのムードが映画そのものと化した印象。もちろん森のシーンでは、犬に装着したカメラの映像なんかも使い、臨場感を出してるものの、基本は現代のわれわれが忘れかけた「時間」の味わい方を教えてくれる作品。ワンコとの関係も愛おしい。
大統領に提供するトリュフの選別、目玉焼きとのシンプルな相性(味と香りが感じられたら、と身悶えする気分に!)という珍ネタも盛り込まれつつ、トリュフがいかに貴重で高価なのか、もうちょっと知りたい下世話な気分にもなるが、そこまで掘ると作品のバランスも崩れるか…。
“森の宝石”を巡る、さまざまな人々
引退を迫る妻の言葉もガン無視な87歳に、若いハンターに穴場を教えたくない84歳。さらに、環境問題やほかのハンターの嫌がらせを目の当たりにし、引退を考える78歳など、個性的すぎるトリュフハンター大集合! その一方で、路上取引もする売り手やグルメな鑑定士など、“森の宝石”を巡る人々がモザイク構造で描かれていく。ハーネスに小型カメラを装着した躍動感溢れる犬視点の映像もあるなか、妙に構図にこだわった絵画のようなワンショット撮影が人間ドラマをより劇的に彩る。また、随所にサウンドデザインのこだわりも感じられ、それによって時間が止まってるような不思議な森に没入体験することができる。
世界はまだまだ不思議でいっぱい
凡百のファンタジー映画よりはるかにファンタジックで、おおよそ、自分の生きる世界線の延長線上にあるとは思えない世界を描くドキュメンタリー。
そう、この映画はドキュメンタリー映画で劇映画ですらない。にもかかわらずこんな不思議な人々の生活を見ることができるとは…。
高級食材白トリュフがこんな形で採取されているとは知りませんでした。トリュフハンターのお爺さんたちが、意図的に文明と距離を置いた生活の中で、独自の価値観に基づいた生き方を見せてくれます。
世界はまだまだ広く、不思議でいっぱいです。