百花 (2022):映画短評
百花 (2022)ライター2人の平均評価: 4
監督としての度量が試されるプレッシャーを鮮やかに撥ね返す
プロデューサーとして第一線で活躍してきた川村元気が、自らの原作で監督と“話題性”が先行しがちだが、チャレンジングな演出がきちんと作品の意図とリンクし、熟練の巨匠が撮ったような安定感。
時に突発的となる俳優の演技、人物と背景の極端なフォーカスの違い、さらに全体の構成の効果で、記憶が曖昧になる感覚を観ているこちらにも体験させる。
メジャーの東宝映画ながら、インディーズ系作品の、ざらついた香りが漂うのも新鮮。なので、記憶を失いつつある母と、その息子の関係に、誰もが同じように感動するわけではなく、そこも本作の大いなる魅力。
20年以上の時間を体現する原田美枝子の凄みで、菅田将暉も受けの熱演に徹する。
愛と記憶と思い出と
ヒット作を多く手掛けたプロデューサー川村元気が遂に長編監督作品を発表しました。
記憶の在り方を取り扱うという点では、本作はあの『ファーザー』を思わせつつ、当たり前が消えていく不安を独特なタッチで描いています、
ワンシーンワンカットによって紡がれる物語は詩の連作集を読んでいるような気分になり、記憶と思い出の違いについて考えさせられました。
”半分の花火”の秘密が解き明かされた時の何とも言えない感動は、ジワリと心に沁みて、不思議な余韻を残します。