わたしは最悪。 (2021):映画短評
わたしは最悪。 (2021)ライター3人の平均評価: 4
どこまでも正直に幸福を追求するヒロインが好感度大!
アカデミー賞やカンヌ国際映画祭でも絶賛されたノルウェー映画。何者かになりたいけれど、でも何になりたいのかまだ分からない。自分の人生を他人に指図されるのも束縛されるのも嫌だし、あらゆる自分の可能性を試してみたい。そんなヒロインが本能や直感や好奇心に従い、その過程で誰かを失望させたり傷つけたりしながらも、自らの幸福を追い求めて猪突猛進していく。恐らく、彼女を好きになれるか否かで本作の評価も大きく変わるだろう。たった一度だけの人生を後悔することなく充実させたい。そのために「私」を最優先させることは、果たして「最悪」な振る舞いなのだろうか。どこまでも正直なヒロインを筆者は好きでたまらない。
そこまで最悪じゃない。誰でも本音で生きたら、こうなりがち?
オリジナルのタイトルは「世界でいちばん悪い人間」で、どんだけ自虐的ストーリーかと思いきや、いやこれ、大多数の人が経験したり、自分に当てはめたりしたくなるエピソードだらけでは? イタい主人公を期待してたら、たしかに毒味な描写もあるにはあるが、意外に深部で共感してしまう、という一作。
人生に迷い、模索する時期に突然「ときめき」が生じれば……周囲の世界は止まって自分だけの世界になる。そんな状況を表現したシーンの演出は『フェリスはある朝突然に』など名作へのオマージュも込められ、テンション上がる。章立ての構成もテンポに貢献。
ただ終盤にもう少しキレがあれば良かった気も。そこで観る人の印象が分かれそう。
ふらふらして欠点のある主人公が人間的でリアル
30歳にもなったというのに、キャリアでも、恋愛でも、人生においても自分が何をしたいのかわからない主人公。だから、突発的に決して褒められないことをしたり、誰かを傷つけたりしてしまう。タイトルがいうように「最悪」ではないけれど、ふらふらして欠点のあるこの主人公は、非常に人間的。映画は、きちんとした筋をもつというより、あたかも会話をやり取りしているかのような感じで進んでいく。そのリアリティある状況を12章に分け、時にナレーションを入れたりして、あえてお話っぽく語るところも面白い。最高にすばらしいレナーテ・レインスヴェはカンヌ映画祭で女優賞を受賞したが、オスカーにもノミネートされるべきだった。