エコー・イン・ザ・キャニオン (2018):映画短評
エコー・イン・ザ・キャニオン (2018)ライター2人の平均評価: 4
西海岸ロック・シーン黎明期のワクワク感が甦る
先に日本公開された『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』は、ミュージシャンの楽園ローレル・キャニオンの風土を通して西海岸ロック・シーンの黄金期を振り返ったが、本作ではそこに集ったアーティストたちの創作活動にフォーカス。ビートルズの登場に衝撃を受けたアメリカの若者たちが、まるで引き寄せられるように西海岸へ集結して新たなムーブメントを起こしていく、その「始まりの時代」のワクワクするような高揚感を今に伝える。ビートルズがザ・バーズやビーチボーイズに影響を与え、「ペット・サウンド」に刺激されて「サージェント・ペパーズ~」が生まれる。互いに共鳴し合うミュージシャンたちの青春回顧録だ。
ディランJr.だからこそ胸襟を開くレジェントたち
昨年WOWOWでも放送された2018年度作品だが、先に劇場公開された『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』(20年)の続きとして観る流れは良い提案だなと。15年のフェスを核とした、ジェイコブ・ディランがホスト役を務めるトリビュート。伝説の当事者インタビューにベック、キャット・パワー、フィオナ・アップル、ノラ・ジョーンズらが後継の視点から言葉と演奏を加える。
監督のA・スレイターは、ジャック・ドゥミ監督『モデル・ショップ』に「ビーチ・ボーイズとママス&パパスの音楽に似た」ものを感じて企画を思いついたとか。大らかとも言える巨視的な眼でカリフォルニア・サウンドの神話が振り返られる。