WANDA/ワンダ (1970):映画短評
WANDA/ワンダ (1970)50年を超えて、行き場を失った主人公にシンクロしてしまう
冒頭に映し出されるその姿だけで、一筋縄でいかない主人公の運命を予感させる。映画の“つかみ”を心得た演出。作られた時代から50年以上のタイムラグは一気に消失。映像の質感、時代の空気感は、明らかに1970年製作という印象ではあるが、主人公の表情、考えることも放棄したような瞳の動きに、時代を超えた魔力が宿る。見方によっては無気力で目的もなく、欲望に身を任せる自堕落なヒロインだが、現代のわれわれも「この主人公は私だ…」と、茫漠に打ち震える人はかなりいるのでは?
この1本だけで早逝したローデン監督、生きていたら、日本公開の前日に90歳。どんな傑作を放っていたか。“失われた未来”と本作の無情感が重なる。
この短評にはネタバレを含んでいます