ブライアン・ウィルソン/約束の旅路 (2021):映画短評
ブライアン・ウィルソン/約束の旅路 (2021)ライター2人の平均評価: 4
苦渋の過去を背負い、今を生きるレジェンドの記録
今年公開の音楽ドキュメンタリーは豊作だが、この映画も切り口の面白さという点に味がある。
大のインタビュー嫌いであるブライアン・ウィルソンの本音を引き出すために、親友とドライブさせて、その際の会話をカメラに収める――監督によると、この手法は想像以上の効果を発揮したとのこと。とある場面で、ビーチ・ボーイズ時代のある曲を車で聴きながら、ひとり涙する彼の姿に、心をかき乱される観客は少なくないだろう。
天才アーティストの記録である一方で、心の病との格闘を続ける人間の苦渋と強靭さも、ブライアンの言葉から見えてくる。音楽ファン以外にも、ぜひ見て欲しい。
「神」と西海岸をドライヴ!
既に『ブライアン・ウィルソン ソングライター』も劇映画『ラブ&マーシー』もあるわけだが、これは格別。友人ジェイソン・ファインが運転する車の助手席に座るブライアン。ふたりはLAの街を走り、行きつけのレストランで食事する。80歳近い“伝説”のプライベートな姿、現在進行形の素朴な日常が映されているのだ。
車でブライアンは自分(たち)の曲をよく聴く。昔のビーチ・ボーイズの曲を聴くと最高の気分になると答える。また39歳で亡くなった弟デニスの『パシフィック・オーシャン・ブルー』(77年)をまだ聴いたことがなく(!)、初めて自宅でじっくり耳を傾ける。この珠玉の光景を目に出来ることに感謝するしかない!