1950 鋼の第7中隊 (2021):映画短評
1950 鋼の第7中隊 (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
3人の監督の持ち味を楽しむ175分
『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』に続く、ウー・ジンVSアメリカ軍を描く中国プロパガンダ映画。毛主席ら、政府の動きを丁寧に描くチェン・カイコー監督に、荒唐無稽なアクションも繰り出すツイ・ハーク監督。そして、歯止めの効かないブルータルな展開と化すダンテ・ラム監督と、三者三様の持ち味を生かしていることもあり、175分の長尺もあまり感じさせない。フー・ジェンやチャン・ハンユーら、イケおじ映画と化しているのも見どころだが、主人公の兄弟以外、登場人物の背景がほとんど描かれていないためか、カタルシスに浸れないのが悔やまれる。しかも、続編『水門橋決戦』ありきのため、消化不良感がハンパない。
中国・香港の巨匠が集結した優秀なプロパガンダ映画
朝鮮戦争において、北側を支援する中国軍がアメリカ軍率いる国連軍を撃退した、1950年の「長津湖の戦い」を描く中国産の戦争スペクタクル。これは昨今の米中対立や台湾問題を念頭に、アメリカ帝国主義の横暴には断じて屈しない!という中国政府の意向を汲んだプロパガンダ映画であることは間違いないだろう。とはいえ、決してアメリカを悪魔化することもなく、これ見よがしに愛国心を煽るわけでもなく、むしろ命と平和の尊さを見る者に訴えるのだから実に巧い。しかも、3時間弱の長尺を全く感じさせない中身の濃さ。チェン・カイコーにツイ・ハーク、ダンテ・ラムという中国・香港の巨匠が集った、優秀なプロパガンダ映画のお手本である。