紅い服の少女 第一章 神隠し (2015):映画短評
紅い服の少女 第一章 神隠し (2015)ライター3人の平均評価: 3.3
“あれ”もいる森
次々と身代わりとなる“伝染する恐怖”という意味では、『リング』の影響は否定できないが、そこは後にサスペンスの秀作『目撃者 闇の中の瞳』を放つチェン・ウェイハオ監督のデビュー作。『赤い影』を思い起こさせる紅い少女の都市伝説を、神隠し的な魔物「魔神仔」に絡めつつ、ばあちゃんと二人暮らしの孫とその恋人という家族の物語に落とし込んでいく。しつこすぎる夢オチやゴラムにしか見えないCGバリバリの「魔神仔」の造形など、ツッコミどころは確かにあるが、虫喰い描写などのジャンプスケアも生かされている。近年の台湾ホラーブームの先駆けとなる重要な一本だけに、7年越しの日本公開に★おまけ。
現代社会の片隅に息を潜める魔物の恐怖を描いた台湾ホラー
昨今盛り上がる台湾ホラー映画ブーム。その原点とも言われる’15年作品がようやくの日本初公開。山や森で人を道に迷わせたり、子供をさらったりする、少女の姿をした民間伝承の妖怪・魔神仔(モーシンナア)を題材に、家族や隣人が忽然と姿を消すという怪現象に見舞われたカップルの恐怖体験が描かれる。現代社会の何気ない日常に息を潜める得体の知れない存在。台湾独特の民間信仰を背景にした禍々しいムードや、いまだ強い地域社会の繋がりを逆手に取った魔神仔の邪悪さにゾッとする。ただ、7年前の映画とはいえCGの技術がかなり荒っぽいため、いよいよ姿を現した魔神仔に拍子抜けしてしまうことも否めない。そこが最大の弱点だろうか。
ああそれは知っているような気がする、という感覚
モチーフは台湾の都市伝説。台湾という場所の風土や文化には共通するものが多々あるのではないか。画面を見ていると、ああそれは知っているような気がする、という感覚に襲われる。山はすぐそこにある歩いて行ける魔界である、という感覚。ふと名前が呼ばれた気がして、それに返事をすると、その途端に何かに魅入られてしまうという感覚。異質なモノも既視感がある。どこかから湧いてくる虫。"小さな子供または猿の姿をしている"と言われる魔物の形は、古い絵巻物に描かれた餓鬼の姿を連想させたりする。
そんな世界の中で描かれるので、第二章で描かれる母と娘の物語も、そういうことはあるかもしれないという気がしてしまう。