カーター (2022):映画短評
カーター (2022)ライター4人の平均評価: 3.5
ノンストップで観てしまう…という意味で逆に配信向きかも?
ワンショットに見える本作のスタイルは、その“途切れない”感覚を味わう意味で途中でストップしたくなくなる。配信で観る映画は何かと一時停止、早送りしたい衝動にかられるが、それを“させない”効果が絶大。配信でも集中力を保てる一作と言えよう。
ワンショット風=リアルな時間経過、となるので、ここまでの大騒動が2時間ちょっとで起こってる、という前提が映画とはいえ驚異レベル。アクションの過激さ、ありえなさ、犠牲者の多さは、ワイスピ、J・ステイサム映画、ジョン・ウィックの遥か頭上で限界突破の印象だが、最初の衝撃と興奮が最後まで続くかは疑問。
アメリカ人を演じる俳優たちが妙に安っぽい(この手の作品にありがち)。
アクション映画は「カーター以前/以後」と言われるようになる
とにかくカメラがぐるんぐるんと動き回り「こんなの見たことない!」というアクション映像が134分間、ほぼワンカットで続く。ゲーム的な想像力と最新の撮影技術、スカイダイビングをはじめとしたほとんどのシーンをチュウォン自らが演じた体当たりぶりに韓国バイオレンス映画特有の容赦のなさが加わって、阿鼻叫喚のアクション絵巻が繰り広げられる(人体破壊描写もあり)。ストーリーは雑で、長尺のためアクションがインフレを起こしているきらいがあるが、スタントマン出身のチョン・ビョンギル監督がやりたいことを徹底的に実写化した映像が凄まじいのは間違いなく、アクション映画は「カーター以前/以後」と言われるのでは。
これぞ正真正銘のノンストップアクション!
いやあ、これは思わず笑ってしまうくらい凄い。北朝鮮で発生した謎の狂暴化ウィルス。その抗体を持つ少女を韓国から北へ送り届けんとする記憶喪失の兵士カーターと、北朝鮮の崩壊を目論むCIAや反政府勢力の攻防戦が展開する。特筆すべきは銃撃戦にカーチェイス、バイクチェイス、ヘリチェイスなどてんこ盛りのノンストップアクションを全編ワンカットで描いていること。実際は編集された疑似ワンカットだし、CG加工もてんこ盛りだが、しかしよくぞこんなもん考えついたな!と驚く超絶スタントに超絶カメラワークの連続。そのトゥーマッチ感は賛否あると思うが、いずれにせよ韓国映画もとんでもない領域まで進化したもんだと感心する。
“東の『グレイマン』”現る!
『ジョン・ウィック:パラベラム』がオマージュを捧げたバイクアクションでおなじみ、『悪女 AKUJO』のチョン・ビョンギル監督がネトフリ出資でやりたい放題! 今度は日中爆走するバイクだけでなく、列車やヘリまで使ったアクションシークエンスにおいて「何だコレ!?」カットのつるべ打ち。ドローンやアクションカムも使いまくった異次元すぎるゲーム感覚という意味では、アップデートされた『ハードコア』といった趣。『ボーン・スプレマシー』×『イーグル・アイ』な設定から『アジョシ』を経て『新感染』に至るまで、既視感ある展開を無視して全力疾走する感覚は、まさに“東の『グレイマン』”といえるだろう。