ヒューマン・ボイス (2020):映画短評
ヒューマン・ボイス (2020)
アルモドバルの美学が詰まった愛と孤独と情念のひとり舞台
ペドロ・アルモドバルがジャン・コクトーの舞台劇を現代にアップデートした作品。別れた恋人が荷物を取りに来るのを部屋で待ち続ける女。何日も音沙汰のなかった恋人からの電話を受け取った彼女は、はじめこそ誇り高く落ち着いて振る舞うが、しかし次第に冷静さを失い感情を露わにしていく。ティルダ・スウィントンのほぼひとり舞台。スタジオに組まれたセットであることを隠さないアパートの部屋が、盲目的な愛の世界に囚われたヒロインの孤独と閉塞を浮き彫りにし、その狂おしいまでの情念と渇望を際立たせる。テクニカラー風の鮮やかな色彩、細部まで目の行き届いた端正な美術セットなど、30分の中にアルモドバルの美学が詰まった佳作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます