探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 (2023):映画短評
探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 (2023)ライター3人の平均評価: 3.3
豪華キャストのお遊び映画。シリーズ化求む。
新宿歌舞伎町を舞台にした、なんちゃってハードボイルド。ミステリ色は非常に薄い。なんせバーのマダムであり、探偵でもあるマリコ(伊藤沙莉)が「逃げた宇宙人を捕らえた科学者を追え」とFBIから依頼されるところから始まるのだ。六つのチャプターからなっていて、内田&片山両監督が三章ずつ担当しているが、観ただけでどちらの演出か判ってしまうところが資質の違いである。70~80年代のカルト作から超メジャー作まで、元ネタが判りやすすぎるほど判りやすいのもお遊び感覚があからさまで許せる。ただ、竹野内豊の忍者であるとか、殺し屋姉妹の話であるとかクセのあるキャラがクライマックスまで十全に生かされていないのが惜しい。
歌舞伎町で行方不明のエイリアンを探せ…!?
歌舞伎町でバーを経営する私立探偵マリコと相方の忍者が、行方不明になった地球外生命体の捜索をFBIから依頼される…というスケールが大きいんだか小さいんだかよく分からないお話(笑)。ストーリーの流れは全6話構成で、『ミッドナイト・スワン』の内田英治と『さがす』の片山慎三が演出を分担している。基本はシュールでナンセンスなコメディ。『E.T.』や『レイダース/失われたアーク』などの引用も微笑ましいのだが、しかホスト狂いのキャバ嬢や落ちぶれたヤクザなど、歌舞伎町に集まる落伍者たちの悲哀を描いたサブプロットが少々深刻過ぎで、全体的なユーモアとシリアスのバランスがあまり良くないように思う。
破綻しない“闇鍋感”がたまらない
『バスケットケース』に詰め込まれ、『レポマン』な発光をする宇宙人をめぐる群像劇だが、忍者に殺し屋姉妹、シリアルキラーらといったキャラが入り乱れ、マジックミラー号(!)まで飛び出す“闇鍋感”がたまらない。これだけ詰め込むと、間違いなく破綻しそうだが、内田英治監督らしさ・片山慎三監督らしさ満載な孤独な男女のドラマが主軸になっていることもあり、決して観客を置いてきぼりにしない。そのため、壮大なクライマックスでは、なぜか胸アツになってしまう。カルトムービーとしての要素も強いため、海外受けも納得だが、バーテンダーというより、ほぼスナックのママ状態な伊藤沙莉の堂々たる座長っぷりも見どころだ。