ミセス・ハリス、パリへ行く (2022):映画短評
ミセス・ハリス、パリへ行く (2022)ライター2人の平均評価: 3.5
上流の美徳と下層の美徳が邂逅する奇跡
聡明で前向きな下町のおばちゃんを主人公に据え、最先端のファッション業界に放り込むという設定だけで、面白さは保証されたようなもの。英国製コメディらしい節度が、それを現実味とともにサポートする。
ブランド感を重視するファッションメーカーと、そのドレスに純粋な美を見るヒロイン。上級と下層の奇跡的な邂逅にはロマンが宿るし、そこに生じるカルチャーギャップはユーモラスそのもので目を引く。
1950年代というのどかな時代背景も生きた、せわしない現代では成立しえないファンタジー。ファッションに興味のある方なら視覚的にも楽しめるだろう。
ミセス・ハリスと一緒に幸せな気持ちになる
幸せな気持ちになる映画。1950年代、英国在住の家政婦ミセス・ハリスがディオールのドレスを買うためにパリに行く、という夢のような物語は、思ったような展開でありつつ甘すぎず、着地点がちょうどいい。
そんな物語を彩るのが、1950年代パリの華麗なオートクチュールのドレスの数々。主演のレスリー・マンヴィルが出演した『ファントム・スレッド』のようなフェティシズムはない代わりに、サロンでのファッションショーなど着せ替え人形的楽しさがたっぷり。衣装は『眺めのいい部屋』から『クルエラ』まで手がける安定のジェニー・ビーヴァン。マンヴィルとイザベル・ユペールが正面から向き合う、英仏名女優対決も迫力満点。