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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け (2022):映画短評

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け (2022)

2023年1月13日公開 129分

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
(C) Universal Studios. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

大山くまお

社会を変える調査報道の重要さを描く

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

タランティーノ映画などを製作した大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの長期にわたる性暴力事件を告発した女性記者たちの静かな闘いを描く。映画的なスリルやサスペンスを追い求めず、演出も脚本も抑制的なのに十分スリリングで、上映時間の129分があっという間。被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強く取材し、物証などを集めて裏を取り、告発相手の回答を得て、複数の責任者のチェックを経た上で世に送り出される調査報道の重要さを描ききっている。こうすれば社会は変えられるんだと示しつつ、告発されてもまだのさばっている“大物”の存在が劇中で何度も示唆されており、闘いは途上だと感じさせられる。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

積み重ねの映画

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

ジャーナリズム映画は題材の鮮度がある意味とても重要になってきます。古くは『大統領の陰謀』、近年では『スポットライト』がありました。本作もまた現在進行形の事柄の”発端”を描いています。
ショービジネスの世界を大きく揺るがしたセンセーショナルな事件ではありますが、映画は過剰な演出や派手さを排し、真摯に丁寧に事柄の”積み重ね”で構成されています。W主演のキャリー・マリガンとゾーイ・カザンは相性の良さを感じさせ、それこそ『大統領の陰謀』を思い起こさせました。決して海の向こうの事と思わずに見て欲しい一本です。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ストイックなつくりゆえにグッとくる社会派エンタメ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 記者たちの日常と使命感、被害者たちが語る痛ましい事実、そしてドキュメント風の語り口。『スポットライト 世紀のスクープ』を思い起こさせる、そんな硬派ドラマ。

 ワインスタイン事件を扱うだけでスキャンダラスだが、本作はそれを必要以上に強調しない。被害者たちの心の痛みと、それに触れる記者たちの心理に的を絞る。そういう意味ではストイックなつくり。

 もちろん、”♯metoo”的主張を声高に訴えたりもしない。あくまで社会の悪しき構造と、人間のドラマにこだわった点がいい。主演女優ふたりの自然体の演技も光り、共感をもって、またスリルを感じながら観ることができた。

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くれい響

事件の当事者アシュレイ・ジャッドも本人役で登場

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

世界の#MeToo運動を引き起こす結果となったトランプ~ワインスタインという、2つのセクハラ事件。それを追い続ける女性記者ミーガンと新たな相棒ミディの“お仕事映画”として描きつつ、彼女たちが出産や子育てをこなす姿をしっかり映し出していくあたりが、いかにも『アイム・ユア・マン』のマリア・シュラーダー監督作。ミラマックスの存在を知らなくても映画ファンなら見るべきテーマだが、『スポットライト 世紀のスクープ』と比べてしまうと、サスペンス演出にモノ足りなさを感じるのも事実。とはいえ、アシュレイ・ジャッドら事件の当事者の出演など、随所に作り手のガチ度が感じられることに、★おまけ。

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平沢 薫

あの事件を生み出した社会状況を描く

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 日本でも報じられた、大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ事件がモチーフだが、この映画は、それをある個人の問題として描くのではなく、その事件を生み出した社会の状況を描く。それによって観客に問いを投げかける。

 例えば女性だけで飲んでいる時、話しかけてくる初対面の男性は、どのように接してくるか。ハラスメントの被害を受けた女性が周囲に相談する時、男性がどんなアドバイスをするか。そうした、似たようなことに思い当たる状況が多々描かれて、女性たちがなぜハラスメントを拒否できなかったのか、なぜ口を閉ざしてしまったのかがよく分かる。そして、事件が他人事ではなくなる。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

世の中を変えることはできるのだ

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

映画は、数々のセクハラを暴かれながらもトランプが大統領選で勝ってしまった1年前から始まる。その取材も担当したミーガン・トゥーイーは嫌がらせを受けたが、それでも彼女と同僚のジョディ・カンターはワインスタインのセクハラを暴こうと挑んだ。このふたりの記者の誠意と熱意に満ちた姿勢には感動するが、話してくれるかどうかわからない被害者に会うためにカリフォルニアやイギリスまで記者を飛ばした上司もすごい。たった1年前には考えられなかったことを可能にしたのは、優れた女性ジャーナリストと、勇気を持って名乗り出た女性たちなのだ。世の中を変えることはできるのだというポジティブなメッセージを与えてくれる作品。

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斉藤 博昭

空前のセクハラ事件、真相がじわじわ明らかになるほど胸が痛く…

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

社会にうねりを起こす出来事は、信念と誠実さ、突き動かされる本能によって作られる。そんな事実を改めて教えてくれる真摯な一作。#MeToo運動のきっかけが題材とはいえ、主人公2人が自分の仕事をまっとうしようというスピリットとプライドが全編に貫かれ、家庭と仕事の両立も丁寧に描かれるので“お仕事ムービー”として激しいまでの説得力が備わった。
特に暴露記事を出すかどうかの流れは、一流新聞社の舞台裏も生々しく、息もつかせぬサスペンスと化していく。
やりたい仕事への野心が不当な扱いで踏みにじられた悲しみ。それを克服する正義感…。それぞれ短いシーンながら、被害者役のキャストたちが多層な表情でみせきって圧巻。

この短評にはネタバレを含んでいます
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